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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第八章 幻想の星
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16-2 アニスが入ったドアの中

 

「は、はい」

「そっか。あんたは外の世界から来たのか。確かに、この世界にはない匂いがする」クンクンと匂いを嗅ぐ。

「外、ですか?」

「あの大木の幹の奥にあるドアから入ってきたんだろう?」後ろの大木を指すので「あ、そうです」


「じゃあ、頑張って鍵を探しな」と言って立ち上がるので「あ、あの……」

「なんだよ」

「あなたは、鍵、どこ、あるか、知ってる、ですか?」

「知ってるよ」

「本当、ですか! お願い、します! そこまで、連れてって、ください!」


「……そんなでけえ声出さなくても、聞こえるよ!」耳を(ふさ)いでしかめっ面をするので「す、すみません!」慌てて謝ると「一体、どのくらい離れてる奴と話してんだよ。鼓膜(こまく)が破れちまうだろう」

「すみま……せん」

「とにかく立てよ」


「アッ、はい」立ち上がって服についた草を払うと「お願い、します。鍵、ある、場所、連れてって、ください」

「今のあんたじゃ無理」と即答。


「無理でも、行かないと、いけない、です!」再び大声を出すとまた耳を(ふさ)ぎ「でけえ声出すなって言ってんだろう!」

「す、すみま、せん!」


「ったく、とにかく、あんたのお供はごめんだ」

「そんな……」涙ぐむと「な、泣くことねえだろう! 鍵のある場所まで行くのは大変だから、やめとけと言ってんだよ」

「大変、でも、行かないと、いけない、です。お願い、します」

「お願いされてもなあ」


 アニスが再び涙ぐむので「わかった! わかったよ! 連れてきゃいいんだろう!」

「あ、ありがとう、ございます」

「すげえ先が思いやられそう」

「良かった……」涙を拭いていると「俺はグリーク。あんたは?」

「ア、アニス、です」


「アニスね。さっきも言ったけど、鍵がある場所まで行くにはかなり大変だぞ」

「……どのくらい、大変?」

「そんなこと聞いてんじゃ無理だよ。やめな」


「頑張り、ます」

「途中で泣きごと言っても、聞かねえからな」

「そんな!」

「……だから」また耳を塞ぐので「す、すみま、せん……」


「いい加減気づけよ。俺の耳は小さな音を聞き分けられるんだ。あんたの耳のように鈍感じゃないんだよ!」尖った猫の耳を指すので「す、すみま、せん」

「ったく、謝ってばかりで、少しは前向きなことが言えないのかよ」

「……す、すみま、せん」


「言った傍からこれだ」ため息を吐くと「とにかく、くじけたらそこで終わりだからな」

「そ、そんな……」涙目を向けると「俺はサポートするだけだ。鍵が必要なのはあんただろう」

「でも……」


「……やめるなら今の内だぞ」

「やめる、こと、できない」

「なら、泣きごと言わずに言うこと聞けよ」

「……はい」

「本当に大丈夫かよ」泣き顔のアニスを見ると、先が思いやられてため息を吐く。


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