14-2 帰還
翌日の午前八時前、ロイはマーティたちを連れて医務局へ顔を出した。
地下基地では十分な手当てができなかったので、負傷した組織員たちが本格的な治療を受けている。
感電したセージも、念のためMRI検査を受けるために別室へ連れていかれると、入れ違いに出てきた医師が近寄ってきて「ケガの具合はどう?」とマーティに声を掛けてきた。
彼女は彼が艦にいたときの担当医師。
「あまり良くない」
「でしょうね。さらに悪くなる前に治療を再開するから、食後に来て」
「わかった」
返事を聞くと、彼女は持ち場へ戻っていく。
セージが検査を終えて戻ってくるのを待ち、朝食を取るために食堂へ行くと、地下基地にいた組織員が数名働いていたので、アルバスたちが驚いた。
ロイが受付で彼らのことを聞くと、手持ち無沙汰なので何か手伝わせてほしいとエルに申し出たらしく、人手不足の場所で手伝ってもらうことになったと話してくれた。
「百人近く増えたから、こういうところは手が足りなくなるな」
「迷惑かけてすまない」アルバスが頭を下げるので「これくらい気にするなよ。僕も、貴重な情報をもらえて助かってるんだから」
各自料理を取って席に着くと「今日はおいしい食事が取れるよ。こんなにゆっくり食べられるのは久しぶりだ」嬉しそうな顔をするアルバス。
「いつも、時間が空いたときにかっ込むか、作業しながら食べてたからな。うまそう。いただきます!」フォークを取るセージ。
ロイも、久しぶりに楽しい食事の時間を過ごすことができた。
食後、リビングへ行ってコーヒーを飲みながら話をしていると、白衣を着た女性がきて「食後のコーヒータイムにお邪魔して申し訳ないけど、いくら待っても私の患者が来ないから、迎えにきたわ」と、入り口で仁王立ち。
「アッ、俺か。忘れてた」
「忘れてた?」表情が険しくなるので「あ、いや、飲み終わったら行くつもりだった」言い直して立ち上がり、ぎこちなく歩いていくと「どこを歩いてきたの? 靴底のバネが曲がってるじゃないの」と言われ、説明しながら部屋から出ていく。
「無事に戻ってこれるか心配だな」後ろ姿を見送るアルバスが「じゃあ、俺もいろいろやることあるから、そろそろ部屋に戻るよ」立ち上がるので「俺も、偽オフィス作りを始めるか。じゃ、また明日」セージと一緒にリビングから出ていく。
その後、セージの検査結果が出て、脳波に少し異常が見られたため、数日入院して再検査することになった。
「まあ、こんなこともあり得ると思って、ケガをしたマーティと一緒に艦での作業にしたんだ。無理するな」ベッド脇で、ふてくされているセージに言い聞かすアルバス。
それから五日後、どういう手段を使ったのかわからないが、目的のミッド系政府機関のアポが取れたとアルバスが言ってきた。
これで、目的の細菌兵器製造の情報を聞きだすチャンスができた。
レジーナ・マリス号は、予定どおり物資補給ということで惑星オーチカムの入港許可を取り、アルバスたちのIDカードの用意も済み、偽オフィスもそれなりに整うと、乗りこむ日を待つだけとなった。




