46-2 イノンドの交換条件
「あれ? この模様、どこかで見たことありますよ」
「それはそうだろう。これと同じだからな」着けているブレスレットを見せると「エッ、エッ?」確認する彼に「俺たちはこの鍵を揃えないといけないんだ。一枚目のこの鍵を手に入れたとき、二枚目の鍵が、幻想の星のどこかにあるという情報を手に入れたんだ」
「これが鍵ですか?」
「そうだ。頼むイノンド。この鍵が揃わないと先に進めないんだ」
「そう言われても……」腕を組んで考えるので「イノンド」さらに声を掛けると「これが、次の場所に必要なんですか?」
「そうだ」頷くと「なんだか、謎解きゲームをしてるみたいですね」
「そうだな。その類と似てるだろう」
「……そうですか。あなたたちは、ある謎を追ってるんですか」
「……そうだ」
「その謎のことは、教えてもらえないんですか?」
「すまない。これが限界なんだ」
「そうですか……」
「私たち、話せない、辛い、です」声を掛けるアニス。「本当は、全部、話したい。けど、他の人、話しては、いけない、言われてる」
「イノンド。ワガママを言ってると思うわ。けど、今はあなたしか頼る人がいないの」
女性二人にまで頼まれると「わかりました。調べてみましょう」と折れるが「但し、私も一緒に行きます」
「エッ!」ロイが彼を見ると「これが、私の交換条件です」
「イノンド!」
「あんな危険な星に、勝手に行かせることはできません」
「でも!」
「ダメでしたら、協力はできません」
「そんな!」
「私たちには、この幸運の香水があるから大丈夫でしょう?」首から下げている例の小ビンを見せるので「……そうですね」逆手に取られて苦笑する。
「では、戻って早速調べます」紅茶を飲み干すと、会議室から出ていく。
『大丈夫だよ』安心させるように声を掛けるシュール。
「谷の中でブレスレットを渡したとき、話すときが近いと思った」
「ありがとう、マーティ」
「ロイにばかり、負担を掛けられないからな」
『でもこれで、何とか幻想の星の情報が手に入るね』ホッとするシュールに「そうだな」と言いつつ「できることなら彼を巻き込みたくないんだけど、そうは言ってられないようだな」
「イノンドがいなければ、俺たちはここまで来れなかったぞ」
「だからこそ、彼に危害が及ばないよう、気を付けないといけないだろう?」
「……そうだな」
「それにしても、こんな事になるなんて」テーブルの上にある鍵と文献を見る。
「マロウに居場所を知らせたのはこれだな」マーティは鍵を持つと「幻想の星も精霊界だろう」
「ねえロイ。文献のことはどうなったの? 解き方わかったの?」落ち着いたところで文献を指すバーネットに「見ていいよ」彼女のほうへ向ける。
「思ってたよりずいぶん古くて大きいのね。すごい厚み」引き寄せてアニスと一緒に見る。
バーネットが本を開くと「本当、何も書いてないわ」パラパラとページを捲っていき「解き方がわかったんでしょう? どうするの?」
ロイが手を伸ばして本に触ると、徐々に文字が浮んでくる。
「ちょっと! どうなってるの?」
「書いてある文を読めばわかるよ」と言うと、バーネットが声を出して読みはじめる。
「ロイにしか、読めない」意外な絡繰りに感心するアニス。
『どうやってロイが触ったってわかるのかな?』不思議でしょうがないシュール。『指紋?』
「僕は犯罪者じゃないぞ」
『じゃあ、他に何がある? 指から光線が出てるとか』
「どんな光線だよ」
「シュール、諦めましょう。私たちでは答えが出ないわ」
『なんか悔しい』
「私も、答え、知りたい」ロイを見ると「もちろん、僕も知りたいよ」
「俺に聞くな」先回りするマーティ。
「それで、何で行くの? レジーナ・マリス号は動かせないでしょう?」
「中型の偵察機で行くつもりだよ」
「じゃあ、あとはイノンドからの連絡待ちね」




