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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第二章 「第一の門 / 鏡の泉の門」
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12-1 第一の門のキーマン

 

 アラーム音で目が覚めると小箱をサイドテーブルの引き出しにしまい、剣を持って部屋から出ると「腹減ったな。そういえば今朝方、果物を食べただけだった」


 どこへ行けば食事ができるのかわからなかったので、指令室へ行けば誰かいるだろうと思い、通路を歩きだす。


 その指令室では、中央テーブルでマーティとアルバスが何やら打ち合わせをしていた。


「マーティ、脚の調子はどうだ?」

「ン? ああ、変わらないな」

「そうか。しばらくは仕方ないか」

「そうだな。ところで、昼飯は食べたか?」

「それなんだけど、どこに行ったら食事できるかわからなくて、聞きに来たんだ」

「会議室に非常用食料が置いてある。俺もこれから行くところだから、案内する」


 指令室から出てマーティの歩調に合わせて歩いていると「まだその剣について説明してくれないのか?」

「ああ、実は、ちょっとした仕掛けがあるんだ」

「仕掛け? 太陽光電池でも仕込んであって、スイッチを押すと光りだすとかいうのか?」

『ウーン、さすがに電池は入らないよ』

「誰だ!」辺りを見回し「変だな。今、少女の声がしたんだが、空耳か?」

「……さすがに電池は入らないよ、と?」


「……ロイが言ったのか?」気味悪そうに見るので「僕じゃない。というより、なぜ聞こえるんだ? セージを起こしたときは聞こえなかっただろう?」

「セージのとき? ああ、その剣が光ったときか。いや、少女の声は聞こえなかった」

「シュール。何かしゃべってみな」

『剣の仕掛けは私がやったの』

「ちょっと待ってくれ」固まるマーティ。

「理解する時間が必要だろう?」

「どうなってるのか、説明してくれ」

「説明前に、昼飯を取りにいかないか?」

「エッ? ああ、そうだな」


 二人は会議室へ行くと、小袋に入った非常用食料を数個と紙の深皿をとり、ロイの部屋へ向かった。


 中に入るとマーティは居間のソファに座り、ロイはポットとコップを二つ持ってくると、中身をあけた深皿にお湯を入れ、できあがるのを待つ間にコーヒーを淹れる。


「ロイはブラックか。俺はミルク入りだ」

 コーヒーを飲み「話を聞く準備はできた。さっきのことを説明してくれ」向かいのロイに話を振ると「説明する前に、なぜ急に声が聞こえるようになったのか理由が知りたい。セージのあの時から今までで、何か変わったことはなかったか?」


「変わったこと?」腕を組んで考えると「変わったことといえば、さっき妙な夢を見て、変わった物を貰ったことだな」


「夢? どんな?」

「少年と少女が出てきて、二人に案内されて森の奥にある石の門へ行った。奥に二本の太い石柱が立ってるんだ」

「鏡の泉の門だ」

「知ってるのか?」

「僕もそこへ行ったよ」

「では、妙な入り方をするのも知ってるな?」

「ああ。自分の顔にのめり込むのが大変だったよ」


「俺もだ。あんな体験は二度とゴメンだ」ウンザリした顔をすると「中に入った後、俺は右側の部屋へ案内されたが、ロイはどこへ行ったんだ?」

「僕は正面の出入り口から廊下に出て、右奥の部屋まで行ったよ」

「そうか。別の部屋に行ったのか。俺が入ったのは控えの間らしい小部屋で、中央に一角獣の像が立ってた。そのとき少年のほうが」

「グリファスのミルだよ」


「グリファス? セージが会った少年か? そうか、彼が例の少年か。では、少女がもう一つのほうに出てきた子か。なるほど。で、その少年、ミルだったな、が像の前に立って、額の角に掛けてあるペンダントを指し『あのペンダントを取って』と言うんだ。像は俺の肩くらいの高さしかなかったので容易に外せたんだが、続けて『それの持ち主は兄ちゃんだから、絶対なくさないように持ってて』と言われて受け取ったのがこれだ」


 ポケットから出てきたのは、右を向いた一角獣のペンダントヘッドだった。


『アーッ! 第二の門の鍵だ!』シュールの声が頭の中に響く。

「マジかよ。そんな所に置いてあったとは思わなかった。ところで、ミルに一角獣の目を見るなとか言われなかったか?」

「いや、そんな事は言われなかったぞ」

「そうか」

「なぜそんな事を聞くんだ?」

「いや、その事はあとで話すよ」


 テーブルに置いてあるペンダントヘッドを改めて見ると、シルバーのような光沢に、瞳の部分に薄紫色の宝石らしきものが埋め込まれている。


「きれいだな。それに、かなり高価そうに見える」

「細工も緻密(ちみつ)だから、結構な値がつくだろう」

「だろうな。では、話の続きを聞かせてくれないか?」


「ペンダントをもらったあと、ミルが『兄ちゃんはこれからある人と旅に出るんだ。その人とはすぐに会えるから、このペンダントを見せて』と言うと(きびす)を返し、部屋から出ると例の鏡を通って外へでた。向き合うと、なぜか二人ともホッとした顔をして『間に合ってよかった』と聞いたところで目が覚めた。なんだ夢か、と思ったら、このペンダントを握ってた」


「なるほど。キーマンであるマーティと一緒にいるのがわかったから、あえて僕に言わなかったのか」

「キーマンとは俺のことか?」

「そう。そのペンダントの持ち主のことだよ」

「どうやら俺が会わなければならない人物とは、ロイのようだな」

「ああ、僕だよ」

「それなら聞かせてもらおうか。俺が旅に出なければならない理由を」

「そうだな。シュール、彼には話してもいいだろう?」

『もちろん。第一の門のキーマンだもん』

「でも、その前に腹ごしらえしないか?」テーブルにある深皿を指す。



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