11-1 精霊域の門
『門を通った先にいるよ』
「その門はいくつあるんだ?」
『……それは……』
「ここまで話して、あとは言えないという言い訳は聞きたくないぞ」
『……そうだよね……ここまで話したら、仕方ないか。門は全部で五つ。鏡の泉の門は、最初の大地の精霊域の入り口だよ』
「大地の精霊域?」
『精霊域とは、自然のエネルギーを司る場所のことだよ』
「自然のエネルギーを司る?」
『そう。大地の精霊域は地のエネルギーを調整してるところ、と言えばわかるかな』
「鏡の泉の門の中は宮殿のようなところだった。あそこでエネルギーを調整してると言うのか?」
『そうだよ。第二の門に付いてはなんて書いてあった?』
「第二の門は、海の精の休息地にある氷の炎の門とあった」
『氷の炎の門は第二の氷晶の精霊域の入り口』
「氷晶、つまり水の領域ってことか?」
『そうだよ』
「その次は?」
『その次は……』
「話してくれるんだろう?」
『……うん』
「話してくれ」
『……第三の門は、炎陽の精霊域に入る、燎の天の門。第四が、天穹の精霊域に入る宵の凪の門で、第五は、風雲の精霊域に入る、嵐の閃の門』
「それ全部に行かないといけないのか? かなり掛かりそうだぞ」
しばらく沈黙が続くが「まあ、ここで考えても答えは出ないか」気を取り直し「口伝で気になることがあるんだけど」
『……なに?』
「どうして最初の口伝と状況が違うんだ?」
『それは、わかんない』
「なんで?」
『何も聞いてないから……』
「……そうか」ロイは再び考えると「もう一つ、教えてほしいことがある。最初に聞いた口伝では一角獣の目を見るなとあって、第二の門の口伝には水龍の前に立つなと書いてあった。各門にはその門を守る者がいるのか?」
『そうだよ。守護獣と呼ばれてる』
「すんなり行ける場所ではないってことか」
『そうだね』
「なんか、複雑そうだな」
『自然のほうが人間より偉大だということだよ』
「耳が痛いな。それで、各門に書かれてる口伝を読まないと次の門へ行けないのか?」
『そうだよ』
「……手が込んでるな」
『これにはちゃんと訳があるんだよ』
「だろうね。でなきゃ、無闇にこういうものは作らないだろうからな」
『すぐ理解してくれて助かる』
「それはどうも。さて、話の続きだ」
上着のポケットから小型のタブレットを取りだし「写っててくれるといいんだけど……」写真フォルダを確認していくと「あった!」鏡の泉の門の中で撮った第二の門の口伝の写真を出して「夢の中で写したものが、どうしてフォルダに格納されてるのか、メカニズムを教えてほしいよ」理解に苦しみながらも、書かれている文章を読んでいく。
『我が宮殿への第一の門へ入りし尋ね人よ。ディア・マレのラクリマを受け取りなさい。それを持ち、第二の門へ向かうがよい。第二の門は、海の精の休息地にある、氷の炎の門より入る。玉座に座るシレーニの天秤に、ディア・マレのラクリマを乗せるがよい。されど尋ね人よ心せよ。水龍の前に立ってはならぬ。立てば逆鱗に触れ、食い殺されるであろう』
「これは門の入り口を示すもので、門がある星の場所は書いてない。第二の門はどの星にあるんだ?」
『知らない』
「知らないじゃないだろう。ちゃんと教えてくれなければ辿り着けないじゃないか」
『本当に知らないんだもん』
「ウソだろう? 門のことを知ってて、どうして場所を知らないんだよ」
『門のことは、教えてもらったから知ってるだけ』
「教えてくれた誰かは、場所まで話してくれなかったのか?」
『うん』
「……マジかよ。こうなったら、もう一度あの二人に会うしかないか?」




