11-2 クレイモアの谷
「ロイ! イノンドの艦から火が出はじめた! なんとかしないと爆発しちゃうよ!」エルが叫ぶので「まだイノンドと繋がらないのか!」
「通信回線を切ってるみたいなんだ!」
「早くシールドを張らないと艦が持たない」
「俺が行ってくる。オリバ! 艦を止めろ!」立ち上がるマーティに「ダメだ! あんな砲撃戦の中に入ったら撃ち落されるぞ!」
「だが、行くしかないだろう。他に方法がないんだ!」
「しかし!」
「俺の腕を信じろ。それに、ここでイノンドを失うわけにいかないだろう」
「……わかった。でも、艦外に出て気分がおかしくなるようだったら、すぐ戻ってこいよ」
「ああ」
「ロイ! 早くなんとかしてよ!」再びエルが叫ぶので、マーティがコントロール室から飛び出していく。
「エル! どうしてもイノンドの艦と連絡が取れないのか?」
「ダメ! 繋がらないよ!」
「マーティが向かった。なんとしてもハッチを開けてもらわなければならない。連絡を取り続けろ!」
『イノンドたち、大丈夫かな?』心配なシュール。
「できるだけのことはやる。今、彼を失うわけにいかないんだ」前方スクリーンを見ると「エル! レーザー砲の用意! イノンドの艦の周りにいる敵艦を撃ち落すんだ! 準備ができしだい始めろ!」
「すぐ手配する!」
「オリバ! 本艦をイノンドの艦の前方につけろ!」
「ハイよ!」
返事を聞くと、エルの隣にいる黒髪をボブカットにした女性に「タンジー! イノンドの艦が制御不能になったら、牽引できるよう手配しろ!」
「ハイ!」
「エル! イノンドと連絡が取れたか!」
「ダメだよ!」
ロイは、メインシートの右側にあるモニターのスイッチを入れると、マーティが乗る小型機に通信を繋ぐ。
「マーティ、まだイノンドの艦と連絡が取れない。ハッチを破って中に入ってくれ」
“わかった”
「これから艦の周りにいる敵艦を撃ち落す。それが終わったら向かってくれ」
“了解”
その間にも、イノンドの艦はモウモウと煙を吐き続けている。
「ロイ! 左舷の護衛艦が火を吹いた!」エルが叫ぶ。
「なんだって!」手元にあるモニターを合わせ「連絡は取れないのか!」
「どの艦も繋がらないよ!」苛立ちを隠せず、声を荒げる。
二隻の護衛艦のうち、レジーナ・マリス号の左舷に付いている艦の右側面が爆発し、巨大な炎を噴きだしはじめていた。
「ヤバい。なんとかしないと爆発するぞ」
「ロイ! 誰かを向かわせよう!」エルに言われ、どうしようか考え込む。
「彼らを見捨てるの?」苛立ち、さらに聞いてくる。「ロイ!」
「すぐにスタンバイさせろ! しかし、艦から出て気分がおかしくなるようなら、すぐ戻ってくるように伝えろ!」
そして、レーザー砲の用意が整うと、イノンドの艦の周りにいる敵艦を一隻ずつ撃ち落していく。
「持ち堪えてくれよ」前方スクリーンに映る、煙を吐き、炎を上げている二隻の護衛艦を見る。
そして、イノンドの艦の回りから敵艦がいなくなると、マーティともう一人のパイロットが発進した。




