8-1 逆恨みの影響
そんな平和な日々が続いたある日。
午前三時。
ピーピーピー。
サイドランプの仄かな明かりが灯る寝室で、呼びだし音が鳴りだした。
ピーピーピー。
「……ン? 煩いな……」
『なあにい? 何の音お?』寝惚けたシュールの声がする。
ピーピーピー。
腕を伸ばし、サイドテーブルに置いてある腕時計を見ると「何だよ。まだ午前三時じゃないか」
ピーピーピー。
「わかったよ! 出ればいいんだろう!」サイドテーブルに組み込まれている通信ボタンを押して呼びだしに出ると “ロイ! 大変だ!”いきなり大声が飛びだしてきた。
エルの交代要員で、夜間の通信担当からだ。
「何だよ。そんなに大声出さなくても聞こえるよ」
“そんな悠長なこと言ってる場合じゃない! 正体不明の船団に囲まれてるんだ! すぐこっちに来てくれ! “
「何だって! マーティを叩き起こせ! それとイノンドに連絡!」
起き上がって通信を切ると、剣を持って部屋から飛びだす。
『なあにい? まだ起きる時間じゃないでしょう?』寝惚けているシュールが文句を言うので「起きろ! 緊急事態だ!」
『エッ! 何? 何が起きたの!』
「謎の船団に囲まれてるらしいんだ!」
コントロール室に行くと、通信席で、同じように呼びだされたエルがイノンドに連絡を取っていた。
ロイが中央のメインシートに座って前方スクリーンを見ると、半円を描いて、レジーナ・マリス号を後ろから取り囲んでいる船団が映っていた。
一体、何隻いるのかわからない。
『あれは何? なんで追ってくるの?』目が覚めたシュールが考える。
「エル、あの船団は何者なんだ?」
「わからない。通信を送っても返事がこないんだ」
「イノンドには繋がったか?」
「ダメ。どうやら妨害電波が出てるみたいだよ」
「ということは、友好的な船団じゃないな。それにしても、なんでもっと早く気付かなかったんだ?」
「それが、さっき急に現れたんだ」ロイに連絡してきた、夜間勤務の通信担当が答える。
「ワープしてきたら反応があるだろう?」
「あったら気付いてるよ」
「じゃあ、ワープしてきたんじゃないのか?」
「ワープしてきたんだけど、まったく反応がなかったんだ」
「そんなことないだろう?」
「ないけど本当なんだよ!」
「レーダーが故障してるんじゃないか?」
「そんなことない。でも、ワープするときにできる空間の歪みも、エネルギー反応もまったくなかったんだ」
「そんなことあるのか?」もう一度前方スクリーンに目をやると、さっきより近づいてきている。「一体何が目的なんだ? ン? あの旗は……」




