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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章「第三の門 / 燎(りょう)の天の門」
296/1021

50 第四の門の口伝に付いて

 

 ロイたちは、会議室から出るとリビングへ向かった。


「アニス、もう遅いから部屋へ戻って休みなよ」ロイが心配すると「大丈夫。今日、遅くまで、寝てた、まだ、眠くない」

「バーネットは?」

「私も大丈夫よ」答える彼女はリビングに着くとカウンターへ向かい、人数分のアイスココアを作りはじめる。


 いつもの席に座るアニスが「マーティ、姿、見えない。どこ、行った?」ロイに聞くと「第四の門の場所を調べに、リサーチルームへ行ったよ」

「あの口伝、内容だけ、調べ、られる?」

「実は、クミン叔母さんから、第四の門の場所の口伝を教えてもらったんだ」

「まあ! いつ?」


「夕飯をご馳走になったあとで。本当は巫女のローズドックに聞こうと思ってたんだけど、出発近くまで寝てたせいで聞きそびれてしまったんだ。

 その事に気付いたのが帰りのジープの中だったから、焦ったよ。

 引き返そうかマーティと話してたら、案内役のディルも巫女の一人だったのを思い出して、彼女に聞こうということになったんだけど、クミン叔母さんが先に話してくれたんだ」


「第四の門の場所のことはジュニパーが受け継いでたから、ディルは知らないのよ。叔母さんが先代の巫女で助かったわ」バーネットがアイスココアを持ってくる。


「四人の中、受け継ぐこと、決まってた?」

「そうよ」

「ロイ、どういう、内容、聞かせて」と言われてポケットからメモ用紙と携帯を取り出すと、録音してあるクミン叔母さんの声を再生する。


『天の彼方(かなた)、宙に浮く大地あり。雷鳴(らいめい)海霧(かいむ)庇護(ひご)のもと、荒ぶる(いかづち)の狩場の先、月虹(げっこう)(ふもと)に、次への門が開かれる』


「まあ! 大地、宙、浮く?」

「こんな変わった地形のところなら絶対有名な場所だと思うから、すぐに割りだせると思うよ」


「雷鳴と海霧というからには、かなり荒れた天候のところなのかしら?」

 悪天候を想像するバーネットが嫌そうな顔をするので「でも、月虹(げっこう)の橋というのがあるから、ああ、月虹とは月の光ではなく月の虹と書くんだ。月の光でできる虹らしいよ」ロイがメモに書かれている文字を見ながら説明する。


「月の光で虹ができるの?」興味を持つバーネット。「見てみたいわ」

「私も、見たい。やっぱり、七色?」夜に掛かる七色の虹を想像するアニス。


「色のことはわからないけど、虹か掛かるくらいだから、荒れた天候ではなく、一時的な気象の変化があって、そのあとに現れるってことなんじゃないかな?」

「ああ、そうかもしれないわね」

「楽しみ。宙に浮く、大地、どんな、所?」

「私もぜひ見てみたいわ」第四の門に思いを()せるアニスとバーネット。


「でも、天の彼方、どういう、意味?」

「宇宙は地上と違って、三百六十度、移動が可能だろう?」

「ええ。じゃあ、今度、上、行く?」

「宇宙は通常重力がないから上下の感覚はないんだけど、わかりやすく説明するならそうなるね。詳しくはマーティが来てからになるけど」


「バーニングゾーンから見た第四の門がある場所が、上になるということでしょう?」

「今までの流れからいくと、そうなるね」

「なんか変な感じね」


「アニスとバーネットは宇宙船で航海したことがないから、地上での感覚で考えてしまうだろう? だから違和感があるんだよ」


「確かにそうね。左右に移動はしても、上下の移動はビルくらいしかないもの。そういえば、シュールはどうしたのかしら? ずっと声が聞こえないんだけど」


 いつもなら、こういう話をしていると参加してくるのに、一向に声がしない。


「たぶん寝てると思うよ。大分疲れてるようだったし、艦に戻れると思って安心したんだろう」ペンダントヘッドの大きさの剣を見るので「まあ、時間も時間だから、寝ててもおかしくないわね」カウンターに置いてある置時計を見ると、もうすぐ日付が変わろうとしていた。


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