6-2 クラシック人形
「本当に、あれが、あのゲリラ部隊の隊長なのか?」
「そう思う気持ちはわかるぜ。まあ、あれが奴の制服。元の制服が地味でダサいから着たくないと言って、自分でアレンジしちまったんだよ。どういう感覚してんのか判んねえけど、甘く見んなよ。すげえおっかねえからな」
「いや、あの格好で、ここにいる時点ですでに怖い……」
そこへ、敵兵の一人が走りこんできた。
「隊長、基地内をくまなく探しましたが誰もいません!」
「見落としはありませんの?」
「西端の部屋だけドアが開きませんので、今、工作チームが作業に当たってます」
「そうですの。では、中を確認したら戻ってきてくださる?」
「ハッ!」一礼すると部屋から出ていく。
(クラシック人形に指示される気持ちって、どんなものなんだろう?)
「もう少ししましたら妹が来ますので、その後に皆様をご案内いたしますわ」
「妹?」セージを見ると「あの顔がもう一つあるんだよ」
「双子なのか? まさか、服装も同じとか」
「いや、妹はゴスロリ」
「ゴスロリ?」
「まあ、似たような服装だけど、もうひとつは真っ黒」
「もう一体、クラシック人形がいるのか?」度肝を抜かれていると、例の声が聞こえてきた。
『早く逃げよう』
「どうすんだよ」
『奥の手を使ってみる』
「どこから出す奥の手なんだ?」
『剣先から出るプラズマ』
「その剣はプラズマを作りだせるのか?」
『まあね』
「それはすごい。もしかして、さっき壁を吹っ飛ばしたのは、プラズマを凝縮してぶつけたのか?」
『そうだよ』
「なるほど。どんな仕掛けがあるのか聞きたいけど、今はそんな余裕ないから。で、今回はそのプラズマを奴らにぶつけるのか?」
『そうだけど、力の加減ができるか心配』
「やめろ。こっちまで感電したらまったく意味がない」
『それは大丈夫だと思う』
「いや、他の手を考えよう」
『時間がないよ』
「……絶対、こっちに当てるなよ」
『頑張る』
「頑張らなくていいから、当てるな」
『うん、頑張る』
「……で、その後はどうするんだ?」
『西端の部屋へ行って、あの穴から逃げる』
「工作チームが、ドアを開けようとしてると言ってたな」
『そこも私が何とかする』
ロイは考えると隣のセージに作戦内容を伝え「爆破装置があったらセットしてくれ」
「何だって!」
「シッ。反撃できない今、追ってこられたら逃げ切れないだろう? 今はこれしか思い付かないんだ」
「だからって、基地を壊すことねえだろう?」
「じゃあ、それ以外で、あのゲリラ部隊から逃げられる手があるか?」
「それは……」あれこれ考えると「……ねえよ」
「装置のセットは時間が掛かるか?」
「いや。時間をセットしてボタンを押すだけ」
「では任せる」
セージは渋々頷き、隣の組織員へ作戦の内容を伝えると、伝言ゲームのように他の組織員へ伝わっていく。
『見付からないようにそっと剣を抜いて』声の指示に従い、敵兵に見付からないように剣を抜くと『私が合図したら剣を上にあげて。その時はみんな目をつむってて』再びセージに伝えると、さらに組織員へ伝わっていく。
「あら、何のお話をされていますの? あたくしも入れていただきたいわ」
ボソボソと話しているロイたちに気付き、声を掛けてきたとき『剣を上げて!』
「行くぞ!」合図を出して剣を上げると、バリバリバリッと電気摩擦音が聞こえ「ウワ―ッ!」と複数の悲鳴が上がると、バタバタと倒れる音がした。
『もういいよ』と言われて目を開けると、敵兵が床に倒れてうめき声を上げている。
「みんな無事か?」組織員の状態を確認すると「セージ。例の装置を五分後で。ほかは西端の部屋へ走れ!」指示を出すとドアのところでセージが来るのを待ち、一緒に通路を走っていく。




