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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章「第三の門 / 燎(りょう)の天の門」
275/1022

35-1 もう一つの口伝

 

 ガチャガチャッ。

 音を聞いて振りむくロイが「シュール! 余計なことするなと言われただろう!」怒鳴ると、マーティとバーネットが急いで周囲を警戒する。


「何、してる?」

 アニスが不安そうに聞くので「もし矢を抜きとることが罠だったら、仕掛けが動くはずだ」マーティが口の前に人差し指を立て、静かにというジェスチャーをしながら注意深く周囲を見回すが「どうやら罠ではなかったらしいな」変化が見られなかったので一応安心すると、抜きとった矢を持つシュールを見る。


「一本だけ、矢の先端、光ってる」

 アニスが矢の一つを指さすと「シュール、貸して」矢を全部受け取るロイは、先端が光っている矢を取って残りを筒へ戻し「この矢も何か意味があるのか?」

 マーティに渡すと「口伝には炎の矢とあったが、一本とは書いてなかった」矢を丹念に見て「もしかしたら、もう一つ口伝があるのかもしれないな」


「今まで口伝が二つあったことはないぞ」

「どこも同じとは限らないだろう?」


「確かに、第二の門は管理者が二人いたからな。続きの口伝が存在する可能性はある」

「もし、続きがあるとしたら、どこにあると思う?」


「まず考えられるのは、正面のあの台だ。両脇の二体の像が最初に的にしてた場所だからな」

「捜してみるか?」

「ああ。みんなはここで待っててくれ」声を掛けると二人でステージ上の台へ走っていく。


 ロイは台の周りを、マーティは倒れた像の先の壁を丹念に見ていくが、文字らしきものは見当たらない。


「読みが外れたか」ため息を吐くロイ。

「もう一捻(ひとひね)り、必要らしいな」考えるマーティ。


 二人が戻ってくると「見付からなかったの?」バーネットが聞いてくるので「もう一捻(ひとひね)りあるらしい」ロイが苦笑すると「イグナス・ヴェナンディの像は関係ないと思うわ」


「なぜ?」心外という顔をすると「だって、口伝は、その門の守護神が描かれてる近くに書かれてるんでしょう? 第四の口伝が書かれてたところにはラチェルタが描かれてたから、今度は朱雀(すざく)の絵の近くじゃないかしら?」


「なるほどね。理屈からいうと納得するな」

「では、朱雀の絵を探すか」

「あるわよ、朱雀の絵」

「どこに?」


「私が担当してる所にあるイグナス・ヴェナンディ像の足元に、朱雀の絵が描いてあったわ」

「なんでその事を先に教えてくれないんだよ」

「その時は関係ないと思ったのよ」

「時間がないんだ。像のところへ行くぞ」


 バーネットに付いて、彼女が担当していた右側の壁際にある、百八十度回転したイグナス・ヴェナンディ像まで行くと、足元にある台座の左側面を指すので、ロイが屈んで見ると、横に並ぶ二羽と左半分の朱雀の絵の上に、三列の文字が刻まれていた。


「なんて書いてあるんだ?」

「ダメだ。僕には読めない」


「それはエレカンペイン文字よ」と言われ、顔を上げるロイが「エレカンペイン? この星の首都の名前じゃないか」

「この星の遺跡(いせき)に掘られてる文字よ。火炎の宮殿の使者たちが使ってたと言われてるわ。この宮殿の至るところに掘られてるから、みんなも見てるはずよ」


「そういえば、壁の模様に使われてるものと同じだ」再度文字を見ると「ずいぶんと変わった模様だと思ってたけど、文字だったとは思わなかった。じゃあ、君なら読めるだろう?」


「古い書物はすべてこの文字で書かれてるから、巫女に選らばれると最初にこの文字を習うのよ」


「第三の門のキーマンが読む文字ということか」ポケットから携帯を取り出して写真を撮るとバーネットと入れ替わり、録音スイッチを押すと「読んでくれ」と声を掛ける。


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