34-2 同じ像
途中「とうとう切れたか」マーティがアイスクーラーを見ると色が透明になっていて、徐々に暑さが襲ってくる。
「シーホリー、さっきの氷はいくつくらい作れる?」ロイが確認すると『そうだね。補給できる水分によるね』
「できれば三つ作ってほしいんだ。この水筒の水で作れるだけ作ってくれないか?」自分の水筒を渡すとシーホリーはその水で一つ作り、シュールに渡すと、同じようにマーティの水筒でアニスの分を作る。
「私のでコストマリーの分を作って」バーネットが水筒を差しだすと『私はいいわ』
「ダメよ。暑さでバテてしまうわ。シーホリー作って」さらに水筒を差しだすので、シーホリーがロイを見ると「バーネットは大丈夫なのか?」
「地元民だもの、大丈夫よ」
「……わかった。シーホリー、頼むよ」
彼にもう一つ作ってもらい、コストマリーが背中にかけているマーティの上着のポケットに入れると「私、水筒」アニスも差しだすので「アニスのは緊急用に取っといて」ロイが押し返す。
「でも……」
「僕たちなら大丈夫だよ。さあ、急ごう」
部屋の奥にある目的の像は、燃える短髪に矢筒を肩にかけ、右手に持つ弓を天に向けて、左手に、話に聞く炎に包まれた矢を持つ少年だった。
彼の両手の甲にもラチェルタの入れ墨が彫られている。
「ここはシュールが確認したところか。シュール。この像を見たとき、手の甲のラチェルタに気付かなかったのか?」
『私が見たとき、こんな格好してなかったよ。弓は持ってたけど、腕を組んでうずくまってたから、手の甲が見えなかった』
「なるほどね。そういうことか」
「この像が目的のイグナス・ヴェナンディなの?」バーネットが像を見上げると「ああ、この像だろう」答えるロイに「その理由は?」マーティが聞くと「第四の門の口伝が書かれてた部屋で、円を描いたラチェルタのサークルがあった場所を覚えてるか?」
「アッ、そうか。そういう意味だったのか!」
「ここは、口伝が書かれてた場所だ」
「部屋の両脇と台の位置は、口伝があった部屋のラチェルタが円のように描かれてた場所か。やはり意味があったな」
「絡繰りがわかると簡単に思えるけど、そこに辿り着くまでが難しいよ」
「それでは、炎の矢をもらって引き返すか」マーティが像の手から矢を外すと「朱雀のところへ戻るぞ」
するとシュールが『ねえ、あの矢は持ってかなくていいの?』像が肩から掛けている矢筒に入っている数本の矢を指さす。
「口伝には他の矢のことは書いてなかったから、いいんじゃないか?」
しかし、どうしても気になるらしく『出してみていい?』と聞くので「余計なことはするな。どこにどんな仕掛けがあるかわからないんだぞ」マーティが注意すると『ハーイ』と返事をするが、彼らが背を向けたとき、筒から矢を出してしまった。




