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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章「第三の門 / 燎(りょう)の天の門」
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29 奇妙な図形

 

 ロイは部屋の中心に立ち、左右を見ると、両側の壁の近くにも、同じように描かれている(かたまり)があることに気付いた。


「面白いな」隣に立つマーティが「こうなると、入り口近くにも同じような絵の(かたまり)があるだろう」入り口に向かって歩きだすので、今度はロイがあとを追う。


 入り口手前で立ち止まるマーティの隣に行くと、彼の足元に円を描くようにラチェルタが描かれていて、振り向くと、口伝が書いてある場所にバーネットが立っている。


「どう思う?」マーティに聞かれ「描かれてる場所に意味があるか、描かれてるものが作る図形に意味があるか、じゃないか?」


「同感だ。十字と見るか菱形と見るか、それともポイントで見るかだな。この光景、覚えておく必要があるぞ」

「ああ。二人で覚えておこう。あとで答え合わせできるように」


 二人は部屋の構図を頭に叩きこみ、足元を確認しながら出口前にいるシュールたちの所へ戻ると「イグナス・ヴェナンディが持つ、炎の矢を探しにいくぞ」奥に見える階段を見る。



 次の階段は狭く、暗いうえに熱気で少し息苦しい。


 先頭からロイ、シュール、バーネット、コストマリー、マーティ、アニス、シーホリーの順で一列になって上がっていると、少しして「アツッ!」と声が聞こえてきた。


「アニス、どうした?」前にいるマーティが振り向くと「足元、暗い、(つまづ)いた。手を付いた、ところ、熱くなった」押さえる彼女の手を見るが「暗くてよく見えないな」ポケットからライターを出し、点けて手を照らすと「赤くなってるが大丈夫そうだ。どこに手を付いた?」


「ここら、辺」指さす壁にライターを近づけると「アッ!」

「シッ!」マーティは(かが)むと階段を照らす。


『どうしたんだね?』彼らの後ろにいる最後のシーホリーが(のぞ)き込んでくるが、マーティは答えずに立ち上がると「みんな、止まれ」と声を掛ける。


「マーティ、何かあったのか?」先頭を行くロイの声が聞こえてくるので「これから言うことを落ち着いて聞いてくれ。絶対、慌てたり騒いだりするな」


「どういう意味?」バーネットがコストマリーの横から顔を出すと「いいから、わかったな?」

「え、ええ、わかったわ」ただならぬ雰囲気を感じとり、素直に(うなず)く。


「もう一度言うが、落ち着いて聞いてくれ。ここの壁にも、ラチェルタの絵が描いてある」

「エーッ!」

「慌てるな! 階段には描かれてない! 壁だけだ!」


 みんなの動きが止まるので、シンと静まり返る。


「とにかく、壁に触らなければ大丈夫だ。さっき確認したが、入り口付近の壁には描いてなかった。たぶん、出口付近の壁にも描いてないだろう。暗い中間の壁にだけ描かれてるらしいから、足元に注意してゆっくり上がるんだ。絶対慌てるな」


『ロイ』後ろにいるシュールが服の(そで)を引っぱるので「大丈夫。壁に触らなければいいんだ。一段ずつ、足元を確認しながら上がるんだ」


 その階段も、手入れがされていないため、かなり傷んでデコボコになっている。


「バーネット。ここら辺も手入れをしてくれるように頼んでくれよ」

「いつもここまで入れるんだったらやってるわよ」

「確かに」


 足元を確認しながら上がっていくと、突然、ボゥッと音がして明るくなった。


「コストマリー! 尻尾が燃えてるぞ!」後ろのマーティが叫ぶと『ウソ!』火を消そうと尻尾を振るので、左右の壁に描かれているラチェルタの絵に当たり、両側から炎が()きだす。


「シーホリー! アニスを後ろに! コストマリー! 尻尾を振るな!」

『誰か火を消して!』パニックを起こすコストマリーがさらに尻尾を振るので壁に当たり、その度に炎が噴きだすので、焦げ臭い(にお)いが立ちこめる。


「マーティ! 早く火を消せ!」ロイが大声を出すと『しゃがみなさい』シーホリーがマーティの肩を押してしゃがませ、口から白い息を吹きだして火を消す。


『もう大丈夫だ』

『ありがとう、シーホリー』ホッとするコストマリー。


『ここから出るまで、尻尾は振らないほうがいいね』

『ええ。気を付けるわ』


『尋ね人、もう大丈夫だ。進んでくれ』

「了解」前を向くとゆっくり階段を上がりはじめる。


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