28-3 第四の口伝
最後の火柱が治まり、焦げ臭い匂いが立ち込める中、ロイとマーティが足元に注意しながら第四の口伝を探しはじめる。
すると、五メートルくらい部屋の中心に戻ったところに、ラチェルタの絵がかたまって描かれている場所があり、ロイは慎重に足元を確認しながら近づいて、絵の傍でしゃがむと「あったぞ! 第四の口伝だ!」
「本当か!」足元に注意しながらロイのところへ行くと、五匹のラチェルタが口伝を取り囲むように円の形に描かれていた。
「こんな所にあったのか」携帯で写真を撮っているロイの隣にしゃがむと「マーティ、念のために読み合せしよう。肉眼で見えても写真に写らない文字か何かがあったり、逆に、写真に写るけど肉眼で見えないものがあるかもしれない」
「そうだな」文字が見やすい位置に移動すると「いいか?」確認して口伝を読みはじめる。
『第三の門へ入りし尋ね人よ。
イグナス・ヴェナンディが持つ炎の矢を受けとり、第四の門へ向かうがよい。
第四の門は、月光の橋の先、沈黙の神殿にある宵の凪の門より入る。
宴の部屋へ向かい、アウステルに夜の矢を持たせるがよい。
されど尋ね人よ、心せよ。雷獣に見付かってはならぬ。
見付かれば雷鳴の檻に監禁され、永遠に落雷を受け続けるであろう』
「なんか、よくわからない名前が出てきたな」画面を見るロイ。「とりあえず、肉眼で見えるとおりに写ってる」
「相変わらず忠告の部分が恐ろしいな」ウンザリするマーティ。「忠告ではなく、警告と言ったほうがよさそうだな」
他に何か書かれていないか、口伝の周りを丹念に調べる。
一緒に周りを見るロイが「永遠に落雷を受け続けるって、普通、一度受けたら感電死すると思うけど」
「死なない程度の落雷なんじゃないか」
「……最悪」
「それにしても、イグナス・ヴェナンディとはなんだ?」
「人の名前かな?」
「イグナスは炎、ヴェナンディは狩人という意味よ」いつの間にかバーネットが来ていて、話に入ってくる。
「火炎の神に仕える従事者の呼び名よ。燃えさかる髪に漆黒の瞳をした、悪しきものを焼き払うことができる炎の矢を持つ狩人。この宮殿に伝わる神話に出てくる守護者のことよ」
「ヘェ。でも、口伝には炎の矢を受け取って夜の矢を持たせろと書かれてる。どういう意味なんだ?」
「朝日浴びし炎の矢は、真昼の陽にて山吹に、夕刻からは朱となりて、夜は紺碧へと変わる。炎の矢は一日に四回、炎の色が変わると言われてるの」
「それは面白い。その絡繰りを知ってないと夜の矢の意味が理解できないな。ということは、これからイグナス・ヴェナンディを探さないといけないのか。バーネット、他に何か特徴はあるか?」興味を持つマーティ。
「そうね。イグナス・ヴェナンディは、炎の矢を入れる革製の筒を持ってると言われてるわ」
「その条件で探せるか?」ロイを見ると「とりあえず先へ進もう。ここに長居するのは良くない」出口を指すので「そうだな。次へ行くか」
携帯をしまうロイがもう一度部屋の中を見回すと「あれ? あそこにも同じような絵の塊があるぞ」部屋の中心に向かって歩いていくので「ロイ。長居は危険だと言ったばかりじゃないか」と言いつつ後を付いていく。




