26-1 火炎の宮殿
赤茶色一色の場所で石柱の間を音が鳴るほうへ歩いている途中「バーネット、この音はどうやって出てるんだ?」不思議に思うロイが後ろから聞くと「火炎の宮殿に入ることが許された者が来たとき、守護神の朱雀が、歓迎の意味をこめて鳴くと言われてるわ」
「では、僕たちは朱雀から歓迎されてるのか」
「嫌われなくてよかったな」
「ああ、こんな所で立ち往生はヤダからな」
宮殿に近づくにつれて鳴き声が大きくなっていき「何か、見える」アニスが前方を指すと「あれが宮殿の入り口よ」
石柱の間から出ると、天高く燃えあがる巨大な炎のように見える石柱の足元に、入り口と思われる長方形の縦穴があり、鳴き声はその奥から聞こえてくる。
「これが火炎の宮殿の入り口か」前に立つ三人に「さあ、行きましょう」バーネットが声を掛ける。
入った先は洞窟のような感じでそれほど広い空間ではなく、誰かによって作られたであろう奥の階段へ向かう。
三・四人が一列になって上がれるくらいの幅がある階段を上がっていると『ロイ。壁に赤く光るものが埋まってるよ』とシュールに言われ、右側の壁を見ると、赤く光るガラスのようなものがいくつか埋まっていた。
「これは何だ?」
「アメジスト、みたい」後ろを歩くアニスが、同じ右側の壁にある石を見る。
「アメジスト?」
「宝石。別名、ザクロ石、言うの」
「宝石か。さすがに詳しいね」
「クラリー夫人、教わった」
「正解、と言ってあげたいけど、ここにあるのは一般的に出回ってるものじゃないの。ゴールドクリムソンという石で、この宮殿の至るところに埋まってるわ。昼と夜で色が変わる、ここにしかない稀少石なのよ」先頭のバーネットが振り返る。
『じゃあ、この宮殿は宝の山ジャン!』目を輝かしているであろうシュール。
「なんで掘り出さないんだ? ここの宝石を売れば財政が潤って、もっと発展するのに」不思議に思うロイに「ここは神聖な宮殿よ。そんな事したらラチェルタに焼き殺されてしまうわ」呆れ顔で言い返す。
また階段を上がりはじめると「そういえば、鳴き声が止んだな」ふと気付くマーティ。
「鳴き声は宮殿の入り口までの案内だから、中に入ると鳴き止むのよ」
「さっき、守護神の朱雀が鳴いてると言ったが、鳴き声の発生源はわかってるのか?」
「それが、宮殿に入ると鳴き止んでしまうから正確にはわからないけど、天を仰ぐ炎の鳥の像が鳴くと言われてるわ」
「宮殿から戻るときはどうなんだ?」
「それがね。帰るときは鳴かないのよ」
「何かの感知センサーが付いてるんじゃないか?」
「いいえ。前に調査したことがあるけど、機械類は一切発見されなかったそうよ」
「マーティ、第二の門同様、僕たちでは解明できないことだよ」
「なんか悔しいな」
『精霊界には、人間界にないものがたくさんあるんだよ』とシュールが言うので「俺たちの知りえないことがあるなら、教えてほしいものだな」
『人間の言葉にないものとかあるみたいだから、説明できないと思うよ』
「……それは残念だ」




