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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章「第三の門 / 燎(りょう)の天の門」
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25 赤茶色の世界

 

 トンネルから出ると、ジープはすぐに止まった。


「少しずつ目を開けて、光に慣れたら外に出て」サングラスを掛けているバーネットが先に車から降りる。


『ウワーッ! 何あれ!』シュールの大声に(うなが)されて目を開けると、奇妙な光景が広がっていた。


 ジープが停まっているのは、噴火口のような、すり鉢状の大きな窪地(くぼち)の途中に突きでている突起のような場所で、目の前には、無数の細長く赤茶けた岩柱が立ちならび、中央奥にある炎の要塞のような巨大な石柱が、天を突き刺すかのように一際(ひときわ)高くそびえ立っていた。


 車から出ると、改めて周りの景色を確認する。


「シュールが言ったことは、あながち間違いではないな」目の前の赤い石柱群を見るマーティ。

「すごい。こんな場所、ある、信じられない」マーティの隣に立つアニス。


「まるで、燃えさかる炎の中に建ってるように見えるよ」アニスの隣に立つロイ。「火炎の宮殿か。まさに、だな」


「どうやって、作った?」

「人ではない方々が作ったんだろう?」マーティがバーネットを見ると「そうよ」と答える。


「さすがに近くにくると上位蜃気楼(じょういしんきろう)は見えないけど、それでも、石柱の上のほうが、(ゆが)んで炎のように見えるな」ロイが見上げると「あれは、現象のほうの陽炎(かげろう)よ」


「なるほど。(りょう)の天の門。天に伸びるかがり火。そういう意味か」


「さあ、ここから歩きよ。各自、水筒とタオルは必ず持ってって。それと、これを首から掛けて」ジープからクーラーボックスを出すと、チェーンが付いたゴツゴツした握り拳大(こぶしだい)のガラス球を取りだす。


「これは何?」受け取るロイがガラス球に触ると「冷たっ!」

「それは、携帯用のアイスクーラーよ。観光案内するとき、熱中症対策として、お客さんに首から掛けてもらうの。クミン叔母さんが持たせてくれたのよ」


「ヘェ。どのくらい持つんだ?」

「そうね。三時間くらいかしら」

「こんなに小さいのに、そんなに持つんだ」


 それぞれ首から下げると「涼しい」不思議そうにアニスが見るので「アニスが住んでた星には必要ないものだな」苦笑するマーティ。


「下に降りるからこっちに来て」バーネットがトンネルの左側にあいている穴へ向かう。

 運転手と護衛車はここに残った。



 バーネットを先頭に穴に入ると、狭い階段をくだって崖下にでる。


「ここからは宮殿が見えないな」マーティが赤茶けた石柱を見上げる。

 途中の突起場所から見たときはそんなに太さを感じなかったが、降りてくるとかなり太いとわかる。


「中央に向かって歩けばいいんだろう?」宮殿がある中央へ向かってロイが指さすと「あてずっぽうで進むと、途中でわからなくなるわよ」

「じゃあ、どうやって行くんだよ」


道標(みちしるべ)があるのよ。みんなにもすぐわかるわ」

「道標?」ロイが近くの石柱を見ていくとマーティが地面を見てまわり、アニスも辺りを見回すが、それらしいものが見当たらない。


「本当に道標があるのか?」揶揄(からか)われている気分になり、マーティが疑いの目を向けると「もうお手上げ? ダメね。これじゃあ、宮殿に行くまで相当時間が掛かるわよ」


 その時『ねえ、何か聞こえない?』とシュールに言われて耳をそばだてると、キュー、キューと、何かが鳴くような音が聞こえてきた。


「さすがシュール。この音が聞こえるほうへ進めば、宮殿の入り口に着くのよ」

「音が道案内とは盲点だったな」なるほどと納得するロイ。


 聞こえてはいたが、石柱の間を通る風の音だと思っていたので、気に留めていなかった。


「確かに、音がするほど風は吹いてないな」石柱を見回すマーティ。

「音声案内板の変形ってところかな」ため息を吐くロイ。


「こんな所で案内板は思い浮かばないだろう」

「だよな」


「シュールが一緒でよかったわね」

「しゃべる探知機」


『ひっどーい! ロイなんか全然わからなかったくせに!』

「ロイ。いつも、一言多い。シュール、かわいそう」

「ごめん、悪かった」


「いつもこうなの?」クスクス笑うバーネットが「進むわよ」先を(うなが)すので、音のするほうへ歩いていく。


「しかし、石柱に印を付けるか、それこそ案内板を立てれば迷わないだろう?」ロイが提案すると「ここは神聖な場所なのよ。キズなんか付けられないわ。それに、この中に入れない間、かなりの強風が吹いてるらしくて、道標のロープは吹き飛んで跡形もなくなってしまうのよ」


「強風か。ここの石柱は風で(けず)られてデコボコしてるのか」近くの石柱を触るマーティ。


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