21 別人のようだけど
やっぱりイノンドたちは驚いた。
「一体何が起きたんですか? 納得できるように説明してください」目の前のバーネットを見て、理解できずに困った顔をする。
「何があっても、深く追求しないという約束でしたよね?」
「確かにそう約束しましたが、こんな事では、なぜなのか説明してもらわなければ、消化不良を起こしてしまいますよ」困惑するイノンドを見て「気持ちはわかりますけど、説明できないんですよ。すみません」
「……フゥ、わかりました。仕方ありませんね」諦めたようにため息を吐き「巫女ではなくてバーネットさんなんですよね?」目の前の彼女に確認すると「ええ、そうよ」ニッコリ笑って答える。
「……声は確かに彼女なんですけど……」どうしても巫女にしか見えなくて、困惑するイノンドに「今まで付けてた仮面を外したと思ってください」と言うので「それは、どんな素材で作られた仮面なんですか?」そんなこと無理だと反論する。
『だから無理だって言ってるのに』呆れるシュールに(仕方ないだろう? 他にどう言い訳できるんだ?)苦笑するロイ。
ことのほか驚いたのは、言うまでもなく王女だった。バーネットの顔を見て一言も出ない。
その王女に「これから出掛けなければならなくなったので、オアシス内を散策しに行けなくなってしまいました。すみませんが、側近の人達と一緒に行ってもらえませんか?」ロイが声を掛けるとしばらくの間ポカンとした顔をして「エッ? はい、そうしますわ」と空返事をする。
『今回はワガママ王女と同じ気持ちだから、驚く気持ちはわかる』
「すみませんイノンド。一緒に残ってもらえませんか?」
「ウーム、それは困りましたね」
「お願いします」
「実は、先ほど艦に連絡したんですが、怪しい宇宙船が着陸してると報告があったんですよ」
「どう怪しいんですか?」
「あなたたちの艦のように、戦闘艦が着陸してるらしいんです」
「ロサ姉妹の船じゃないんですか?」
「彼女たちの船ならすぐわかります」
「ああ、そうですね」
「こんな辺境地にわざわざ着陸しなくとも、近くにもっと近代的な星があります。なぜここに降りたのか、現在調査してます」
「確かに、こんな星に戦闘艦が降りるのは不自然ですが、僕たちのように何か理由があるかもしれないので、頭から怪しいと決めてかかるのはどうかと思いますが」
「まあ、それは調べればわかることですから」
「イノンド。何か隠してますね?」
「エッ、何をですか?」惚けるノンド。
「ウソを吐くのが下手ですね。何があるんですか?」
「そうですね。あなたたちが、これからどこへ行くのか教えてくれたら話しましょう」
「火炎の宮殿に行くと話したじゃないですか」
「その先があるでしょう? 我々の知らない先が」
「その先ですか?」
「今さら惚けないでください。そのくらい、話を聞いていればわかりますよ」
「……取引ですか?」
「そうです。ギブアンドテイクです」
『イノンド、探りを入れてくるようになったね』ちょっと警戒するシュール。
「では、次の機会に聞きます」
「また引くんですか?」
「取引に応じることができないので」
「そんなにアッサリ引かれると困りますね」
「何があっても、深く追求しないと約束したじゃないですか」
「そうですけどね」
「約束は守ってください」
「……仕方ないですね」イノンドはまた溜め息を吐くと「そういえば、ブロードリーフ王子の件に関して、続報が来ました」
「どんな事ですか?」
「大したことではないのですが……」
「どんな事でも教えてください」




