17-2 暑い国のコーヒー
そこへアニスが入ってきて「ロイ! 早い!」
「……わかったから、マーティと同じこと言わなくていいよ」
「いつも遅いから言われるんだ」
『明日から早く起きればいいんだよ』とシュールに言われ「……遅くていい」
ロイの反応がおかしくてクスクス笑うバーネットが「アニスは紅茶よね?」立ち上がると「あ、自分、入れる」
「いいから座って。ここではお客様なんだから」空いている席に座るよう言うと、再び隣の部屋へ向かう。
「アニスも、食後、時間を取ってください」バーネットの姿が見えなくなると、ディルが話し掛ける。
「昨日会った巫女が、僕たちに話があるらしいよ」
『きっと、第三の門についての話だと思うよ』シュールが付け足すと軽く頷く。
朝食が終わるとまた窓際の席に座り、食後のデザートである果物とアイスコーヒーを飲んでいると、王女が側近を連れてやってきた。
「ロイ様。ここの方がオアシスの中を案内してくださるんですって。この後、一緒に行きましょうよ」
「そうなんですか。でも、この後、やらなければならないことがあるんですよ」
側近が隣のテーブルから椅子を持ってきてロイの隣に置くので、その椅子に座り「それは明日でもよろしいではありませんか」とロイの腕を掴むので『何どさくさに紛れて腕なんか組んでるのよ!』すかさずシュールが怒鳴る。
「……王女。後回しにできないので、側近の二人と一緒に行ってきてください」そっと王女の腕をどかすと「では、そのご用事が終わってから行きましょう。いつ頃終わりますの?」食い下がる。
「また!」バーネットが口を挟もうとするので止め「わかりました。用事が終わったら行きましょう」と言うと王女は笑顔になり「それではお部屋におりますから、ご用事がお済みになられたらお声を掛けてくださいね」
ロイの返事に満足する王女が上機嫌で部屋から出ていくと、ムスッとしているバーネットをディルがまあまあと宥める。
『相変わらず王女は積極的だけど、今回は珍しく素直に引いたね。それに、先に部屋へ戻るなんて、何か企んでるよ』真意を探るシュール。
(今は考えたくない)深読みをしたくないので眉間にしわが寄る。
「あとで行ける状態だといいがな」とマーティが言うので「確かに」頷くロイ。
その後、飲み終えるとイノンドには訳を話し、ディルの案内で、巫女のローズドックが待っている部屋へ向かった。




