15 一族の巫女
一息ついたところで、ジュニパーが「もうすぐお食事の用意が整いますが、その前に、私たちの巫女にお会いいただけますでしょうか。オアシスに来られた方はお会いいただく仕来りとなっておりますので。お疲れのところを申し訳ございません、ディルがご案内いたしますので、よろしくお願いいたします」部屋の外へ出るよう促す。
廊下に出るとディルに付いて奥へ進み、今度は赤いタペストリーが掛かったドアを開けて中に入る。
薄暗い控えの間と思われる部屋を横切り、向かいのドアをノックして中に入ると、正面に緋色の民族衣装を着た二十代の女性が、お付きの女性二人に挟まれて玉座と思われる椅子に座っていた。
『アーッ! 髪の長い金髪の女性だ! この人もディルにソックリだよ!』驚くシュールの声を聞いて「双子じゃなく三つ子なのか?」意外な展開に戸惑うロイ。
その女性はディルたち同様褐色の肌をしているが、黒髪ではなく長い金髪を頭の後ろでまとめ、緋色の紐で編んだ太い紐で髪を留めている。
そして、他にも二人と違うところがあった。
『ロイ、あのひと人間?』
(たぶん……あんな瞳の色、初めて見た)
彼女だけ、赤みがかった金色の瞳をしているのだ。
「すごいな。火の精霊どころか炎の女王って感じだ」
「どうだ? 夢の中に出てきたのは彼女か?」マーティが隣にいるアニスに確認すると「わから、ない。けど、雰囲気、似てる」
ロイたちの後ろにいる王女は側近たちの後ろに隠れ、驚きの目で目の前に座っている女性を見ていて、王女たちのさらに後ろにいるイノンドと部下二人は、黙ってやり取りを聞いているが、その表情は、何が起きているのかわからず、困っているように見える。
巫女は一通り見回すと「遠きところをよく来られた」と声を掛けてきた。
「あなたが巫女ですか?」ロイが確認すると「いかにも。疲れたであろう。部屋を用意してある。今夜はゆっくり休まれよ」
「では、失礼します」ディルが一礼して部屋から出ていこうとするので「これだけ?」一同、呆気に取られると「そうですよ。さあ、食事が冷めないうちに戻りましょう」戸惑いながらも巫女に一礼して部屋から出ると、来た廊下を戻っていく。
その途中『あの巫女が第三の門のキーマンかな?』シュールが聞いてくるので「そうかもしれないね」返事をするロイが「明日、もう一度巫女に会わせてくれるように、ディルに話したほうがいいんじゃないか?」アニスの頭越しにマーティに小声で話し掛けると「そうだな」と頷く。
「でも、違ったら?」心配そうなアニスに「その時は他を探すことになるね」
「三人で何をコソコソ話してるの?」後ろを歩くバーネットが話に入ってくるので「あ、いや、何でもないよ」そそくさと離れる。
長い廊下を戻ってくると、先を行くディルが、さっきまでいた部屋の隣のドアを開けて「どうぞ」と中に入るよう促す。
その部屋の中央にも細長いテーブルが置かれ、人数分の食事の用意が整っていた。
「お待たせ致しました。どうぞ、お好きな席にお掛けください」
部屋で待っていたジュニパーが手を叩くと、奥のドアから大皿を持った女性が数名出てきてテーブルの中央に置いていくので、それぞれ席に着くと好きなものを小皿に移し、食べはじめる。




