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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章「第三の門 / 燎(りょう)の天の門」
242/1021

13 オアシス

 

 奥へ延びる道を進み、鬱蒼(うっそう)と茂った木々の間を抜けて広場に出ると、取り囲むように高床式の建物が立っている。


 中央に一際(ひときわ)大きな家が建ち、入り口の両脇に松明(たいまつ)が置かれ、その前に立っている兵士らしい見張りの男が二人、近づいてくるロイに銃を向け「止まれ! 何者だ!」と聞いてくる。


「怪しい者ではありません。こちらへ来る途中、砂漠の真ん中でジープが動かなくなってしまって、僕は代表で助けを呼びにきたんです」


「砂漠の真ん中から一人で歩いてきたのか?」

「信じられない。いくらなんでも不可能だ」

「本当のことを言え!」

「何しに来た!」


 見張りの二人が()わる()わる質問してくる。


『ディルのことを話したら、信じてくれるかもしれないよ』とシュールに言われ「ガイドの仕事をしてるディルをご存知ですか? 彼女に案内されてきたんです」説明すると「何だって? では、客ということか?」銃を降ろす。


「彼女と僕の連れが砂漠の真ん中で立ち往生してるんです。十一名いますので、早く迎えに行ってもらえませんか?」


 男たちは顔を見合わせて(うなず)くと、小柄な男が、後ろの建物へ続く長い階段を上がっていく。


 少しすると、先ほどの男と一緒に女性が出てきた。

『ディルだ!』驚くシュール。

(いや、別人だよ。髪型が全然違うだろう)


『でも、顔がソックリだよ』

(きっと彼女は双子なんだよ)


 階段を下りてくる女性に「あなたはディルの姉妹ですか?」と聞くと「はい、ジュニパーと申します。砂漠の真ん中で立ち往生していらっしゃるとお聞きしましたが」


 痩身(そうしん)の彼女の髪もディル同様黒いが、髪型はセミロングのソバージュ。しかし、額にはめているサークレットはディルのものと同じだった。


「ロイです。コールという甲虫(こうちゅう)にガソリンタンクに穴をあけられてしまって、ジープが動かなくなってしまったんです」


「まあ、コールですか? それは変ですね。この時期には出てこないのですが」

「ディルもそう言ってました」


「わかりました。迎えに行くよう手配いたします」見張りの男たちに対応するよう伝えると「こちらへどうぞ」降りてきた階段を上がっていく。


 階段を上がり切ると、蜥蜴(とかげ)刺繍(ししゅう)(ほどこ)されたタペストリーが掛かっている観音開(かんのんびら)きのドアを開け、中に入ると、ランプの(あか)りだけなので薄暗いが、かなり大きな部屋だとわかる。


 そして、(こう)でも()いているのだろう。独特の香りが充満していた。


『すごい所だね』辺りを見回しているようなシュール。

 ジュニパーはその部屋を突っ切ると正面のドアを開け、さらに奥へと歩いていく。


 長い廊下を進んでいくと、黄色地の布に幾何学模様(きかがくもよう)()り込まれたタペストリーが掛けられているドアの前で止まり、振り向くと「こちらのお部屋で、お連れの方が到着するのをお待ちください」と、中へ入るようドアを開ける。



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