13 オアシス
奥へ延びる道を進み、鬱蒼と茂った木々の間を抜けて広場に出ると、取り囲むように高床式の建物が立っている。
中央に一際大きな家が建ち、入り口の両脇に松明が置かれ、その前に立っている兵士らしい見張りの男が二人、近づいてくるロイに銃を向け「止まれ! 何者だ!」と聞いてくる。
「怪しい者ではありません。こちらへ来る途中、砂漠の真ん中でジープが動かなくなってしまって、僕は代表で助けを呼びにきたんです」
「砂漠の真ん中から一人で歩いてきたのか?」
「信じられない。いくらなんでも不可能だ」
「本当のことを言え!」
「何しに来た!」
見張りの二人が代わる代わる質問してくる。
『ディルのことを話したら、信じてくれるかもしれないよ』とシュールに言われ「ガイドの仕事をしてるディルをご存知ですか? 彼女に案内されてきたんです」説明すると「何だって? では、客ということか?」銃を降ろす。
「彼女と僕の連れが砂漠の真ん中で立ち往生してるんです。十一名いますので、早く迎えに行ってもらえませんか?」
男たちは顔を見合わせて頷くと、小柄な男が、後ろの建物へ続く長い階段を上がっていく。
少しすると、先ほどの男と一緒に女性が出てきた。
『ディルだ!』驚くシュール。
(いや、別人だよ。髪型が全然違うだろう)
『でも、顔がソックリだよ』
(きっと彼女は双子なんだよ)
階段を下りてくる女性に「あなたはディルの姉妹ですか?」と聞くと「はい、ジュニパーと申します。砂漠の真ん中で立ち往生していらっしゃるとお聞きしましたが」
痩身の彼女の髪もディル同様黒いが、髪型はセミロングのソバージュ。しかし、額にはめているサークレットはディルのものと同じだった。
「ロイです。コールという甲虫にガソリンタンクに穴をあけられてしまって、ジープが動かなくなってしまったんです」
「まあ、コールですか? それは変ですね。この時期には出てこないのですが」
「ディルもそう言ってました」
「わかりました。迎えに行くよう手配いたします」見張りの男たちに対応するよう伝えると「こちらへどうぞ」降りてきた階段を上がっていく。
階段を上がり切ると、蜥蜴の刺繍が施されたタペストリーが掛かっている観音開きのドアを開け、中に入ると、ランプの灯りだけなので薄暗いが、かなり大きな部屋だとわかる。
そして、香でも炊いているのだろう。独特の香りが充満していた。
『すごい所だね』辺りを見回しているようなシュール。
ジュニパーはその部屋を突っ切ると正面のドアを開け、さらに奥へと歩いていく。
長い廊下を進んでいくと、黄色地の布に幾何学模様が織り込まれたタペストリーが掛けられているドアの前で止まり、振り向くと「こちらのお部屋で、お連れの方が到着するのをお待ちください」と、中へ入るようドアを開ける。




