11-2 黄金の砂漠
「蟻地獄の一種です。直径一メートルから三メートルくらいの巣を作るんです」
「それ、メチャクチャでかいぞ」
「センサーとは車に付いてるものだろう? 取り外せないのか?」マーティがジープを見ると「バッテリーで動くものなので、外せないんです」
「では、来た道を戻ろう。タイヤの跡に沿って戻れば、巣に落ちることはないだろう?」
「無理です。風が出てきてるので、跡は消えてしまってます」
「無線があるだろう? 助けを呼べないか?」
「どこかで砂嵐が起きてるようで、繋がりません」
「私たちが持ってきた通信器も使えませんよ」イノンドの部下が持っている小型通信器を見せる。
「他に連絡できる方法はないのか?」
「砂嵐が止むのを待つしかないです」
「どうする?」ロイを見ると「何か打ち上げて合図を送るとか」
「砂嵐が起きてるので見えないと思います」
話し合いの場に王女たちが来た。
「何かいい方法を思い付かないか?」マーティが見回すと「空、飛べれば、いいのに」アニスが呟くので「神に祈って、天使でも派遣してもらう?」ロイが空を指さすと「冗談、なし」
「飛べなくても、宙に浮くことができればいいんですけど。そうすれば、巣に落ちなくて済みますから」苦笑するディルに「そんな、できもしないことを言ってる場合じゃないぞ」マーティが言い返すと『ロイは浮くことができるじゃん』
シュールの言葉を聞いてマーティとアニスがロイに詰めより「本当にそんな事ができるのか?」
「いや……」
『旅に出る前、ミルダシアから浮く力を貰ったじゃん』
「アッ、そうだ」貰った経緯を簡単に話すと「なんでそんな大事なことを黙ってた!」
「黙ってたんじゃない。忘れて、たんだ」
「シュール、覚えてた。よかった」
「とにかく、ここはロイに行ってもらおう」
「ディル。オアシス、方向、どっち?」と聞くと彼女は南を向き、四十五度の角度にある赤く光る星を指さして「あの星を目安に、真っ直ぐ南へ行けば着きますけど、何かいい案があるんですか?」
「僕が助けを呼びに行きます」
「何言ってるんですか! さっきヘルの巣があると言ったじゃないですか! 落ちたら助からないんですよ!」
「でも、誰かが助けを呼びにいかなければ、みんなここで凍死してしまうでしょう?」
「ロイ、止めて! 危険すぎるわ!」バーネットが止めると「そうですわロイ様。おやめください!」王女も止める。
「大丈夫ですよ。必ず助けを呼んできますから。ヘルのほかに危険な生物は?」ディルに聞くと「サソリとか毒蛇がいます」と言われ、言葉を失う。
「やっぱり危険よ! ほかの方法を考えましょう!」
「ロイ様が危険な目に遭うことはありませんわ!」
この時ばかりは、二人の意見が一致する。
「こちらから攻撃しなければ大丈夫だよ」
「気付かないうちに踏んでたらどうするの!」
「ふいに襲ってくることもありますわ!」
「何とか頑張りますよ」
「ロイ様!」止める王女を制し、マーティを見ると「戻ってくるまで、何とか寒さからしのいでくれ」
「こっちは何とかする。気を付けていけよ」
「ロイ、水筒」アニスが、ジープの給水器から水を入れて持ってくる。
「無理するな。シュール、頼んだぞ」
『了解!』
ロイは夜空を見上げると目標の赤い星を指し、方角を確認すると歩きだす。




