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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章「第三の門 / 燎(りょう)の天の門」
239/1021

11-1 黄金の砂漠

 

 ものの十分も走ると今まであったジャングルが消え、キラキラと砂が光る砂漠へでた。


紺碧(こんぺき)の空だ」見上げるマーティ。

「きれい、青空」感動するアニス。


「都会では見られない色だな」見上げるロイに「空気が()んでないと、絶対見られない色なんですよ」ディルが説明する。


「四十八年生きてきて、こんなにきれいな青空を見たのは初めてです」

「イノンド、四十八歳? もっと若く、見えます」

「そうですか? それは嬉しいですね」アニスの言葉に機嫌をよくする。



 午後五時を回った頃、ディルがエアコンのスイッチを切ってジープの天井を開ける。


「あれ? 涼しい」


 空が夕日で染まるころになると、だいぶ気温が下がってきたのか、過ごしやすくなってきた。


 ロイは立ち上がるとサンルーフから顔を出し「気持ちいい!」

「このくらいの気温なら過ごしやすいな」マーティも立ち上がる。


「ディル。オアシスまであとどの位?」助手席の彼女に聞くと「そうですね。あと一時間くらいです」腕時計を見るので「まだそんなに掛かるの?」

「普通の道と同じように走れませんから、その分、時間が掛かるんです」


 右側の空が真っ赤になってきた。


『明日も晴れるね』とシュールが言ったとき、突然ジープが速度を落として止まった。

「こんな所で止まって、どうしたんだ?」ロイが運転手を見ると「ガソリンがない!」メーターを見て叫ぶ。


「村を出るとき確認したでしょう?」ディルもガソリンメーターを見ると後ろのジープも止まり、大騒ぎしている。


「ディル、もしかしたら」と言う運転手の顔を見ると「まさか!」二人はジープから降り、車の下を覗き込むので、ロイたちもジープから降りる。


 運転手が腹ばいになって車の下に(もぐ)りこみ、出てくると、右手に持っているナイフの先に、黒い(かたまり)がいくつか刺さっていた。


「やっぱり……」肩を落とすディルに「あれは何?」ロイが聞くと、運転手がナイフをこちらに向けるので「それは……虫?」黒い(かたまり)から足が数本生えている。


「コールという甲虫(こうちゅう)です。ガソリンが好物で、この(かた)(とが)った口で、ガソリンタンクに穴を開けるんです」


 よく見ると三匹刺さっている。


「今の時期には出てこないはずなのに」困った顔をするディル。

『ガソリンを飲む生き物がいるんだ』初耳のシュール。


「おいしい?」

「アニス。ガソリンは飲み物じゃないだろう」マーティが注意する。


 その時、後ろのジープに乗っていたバーネットが運転手と一緒に走ってきて「ディル、大変よ! コールがいるわ!」と叫ぶので「そっちもやられたの?」


「二匹ついてたわ」ナイフに刺さったコールを見せると「どうしよう。予備のガソリンはあってもタンクがないわ」困った顔をするディルに「どっちに行ったほうが近い?」ロイが来た道と先の道を指すと「そうね……どっちも同じ位の距離だわ」


「じゃあ、進んだほうがいいな。歩くとどの位かかる?」

「歩きだと……三時間くらいかしら」

「三時間!」


「気温も大分下がってきた。いつまでもここにいるわけにいかないぞ。夜の砂漠は気温がマイナスにまで下がると聞いたことがある」マーティが話に入ってくる。

『今度は寒くなるの!』泣きそうになるシュール。


「薄着、過ぎる。これ、凍死、する」寒さを知っているアニスが不安そうに(つぶや)くので「ディル、歩こう」ロイが提案すると「センサーがないと危険です。ヘルの巣に落ちたら助かりません」

「ヘルって?」


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