11-1 黄金の砂漠
ものの十分も走ると今まであったジャングルが消え、キラキラと砂が光る砂漠へでた。
「紺碧の空だ」見上げるマーティ。
「きれい、青空」感動するアニス。
「都会では見られない色だな」見上げるロイに「空気が澄んでないと、絶対見られない色なんですよ」ディルが説明する。
「四十八年生きてきて、こんなにきれいな青空を見たのは初めてです」
「イノンド、四十八歳? もっと若く、見えます」
「そうですか? それは嬉しいですね」アニスの言葉に機嫌をよくする。
午後五時を回った頃、ディルがエアコンのスイッチを切ってジープの天井を開ける。
「あれ? 涼しい」
空が夕日で染まるころになると、だいぶ気温が下がってきたのか、過ごしやすくなってきた。
ロイは立ち上がるとサンルーフから顔を出し「気持ちいい!」
「このくらいの気温なら過ごしやすいな」マーティも立ち上がる。
「ディル。オアシスまであとどの位?」助手席の彼女に聞くと「そうですね。あと一時間くらいです」腕時計を見るので「まだそんなに掛かるの?」
「普通の道と同じように走れませんから、その分、時間が掛かるんです」
右側の空が真っ赤になってきた。
『明日も晴れるね』とシュールが言ったとき、突然ジープが速度を落として止まった。
「こんな所で止まって、どうしたんだ?」ロイが運転手を見ると「ガソリンがない!」メーターを見て叫ぶ。
「村を出るとき確認したでしょう?」ディルもガソリンメーターを見ると後ろのジープも止まり、大騒ぎしている。
「ディル、もしかしたら」と言う運転手の顔を見ると「まさか!」二人はジープから降り、車の下を覗き込むので、ロイたちもジープから降りる。
運転手が腹ばいになって車の下に潜りこみ、出てくると、右手に持っているナイフの先に、黒い塊がいくつか刺さっていた。
「やっぱり……」肩を落とすディルに「あれは何?」ロイが聞くと、運転手がナイフをこちらに向けるので「それは……虫?」黒い塊から足が数本生えている。
「コールという甲虫です。ガソリンが好物で、この堅く尖った口で、ガソリンタンクに穴を開けるんです」
よく見ると三匹刺さっている。
「今の時期には出てこないはずなのに」困った顔をするディル。
『ガソリンを飲む生き物がいるんだ』初耳のシュール。
「おいしい?」
「アニス。ガソリンは飲み物じゃないだろう」マーティが注意する。
その時、後ろのジープに乗っていたバーネットが運転手と一緒に走ってきて「ディル、大変よ! コールがいるわ!」と叫ぶので「そっちもやられたの?」
「二匹ついてたわ」ナイフに刺さったコールを見せると「どうしよう。予備のガソリンはあってもタンクがないわ」困った顔をするディルに「どっちに行ったほうが近い?」ロイが来た道と先の道を指すと「そうね……どっちも同じ位の距離だわ」
「じゃあ、進んだほうがいいな。歩くとどの位かかる?」
「歩きだと……三時間くらいかしら」
「三時間!」
「気温も大分下がってきた。いつまでもここにいるわけにいかないぞ。夜の砂漠は気温がマイナスにまで下がると聞いたことがある」マーティが話に入ってくる。
『今度は寒くなるの!』泣きそうになるシュール。
「薄着、過ぎる。これ、凍死、する」寒さを知っているアニスが不安そうに呟くので「ディル、歩こう」ロイが提案すると「センサーがないと危険です。ヘルの巣に落ちたら助かりません」
「ヘルって?」




