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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章「第三の門 / 燎(りょう)の天の門」
237/1021

9 全員で出発

 

 車は大通りに出ると南へ向かって走る。


「ああ、一時はどうなるかと思った」後部座席のロイが疲れた声を出すと「あの、日傘をさしてるお嬢様は誰なんですか? 王女と呼ばれてましたけど」ディルが当然の質問をしてくる。


「彼女はある星の王女で、訳あって艦に乗ってるんですよ」イノンドが理由を話すと「本物の王女なんですか? そうなんですか。そういえばお付きの人がいましたね。でも、二人だけで王女の護衛ができるんですか?」


「我々が護衛として付いてますから」二台目のジープに乗れなかったイノンドが答えると「あなた方が?」

「私たちは宇宙管理局の者です。彼女の父親から護衛の任務を受けて同行してるんです」


「あなたは宇宙管理局の人なんですか!」

「そうです」


「なんか、大変そうですね」同情の目で見られて「ハハハ、そう見える?」苦笑するロイ。

「なんか、バーネットと張り合ってるみたいですけど」


「意見が合わないらしくてね。どちらも引かないから、時々ああなるんだ」

「そうですか」


「ところで、火炎の宮殿までどの位かかるかな?」

「順調に行けば明日、着けますよ」


「順調に? では、何か障害になるものが途中にあるの?」

「いえ。宮殿に行く前に、やらなければならないことがあるんです」


「それはどんなこと?」

「それは今日、泊る宿に着いたらお話しします」


 二時間近く走ると、休憩のために近くの村に立ち寄った。


 ジープから降りると「さすがに暑いな。ジープの中がクーラー効いてて涼しかった分、外とのギャップがありすぎる」マーティがムッとする熱気に顔をしかめると「木陰を通ってください。直射日光に当たりすぎると熱中症になってしまうので、気を付けてください」声を掛けてくるディルに案内されて小屋に入る。


 その小屋は椰子(やし)の葉を敷きつめた屋根に、壁のない柱だけが建っている、暑い地方独特のものである。

 その中に置いてある細長いテーブルに並んで座ると、女性が数名、近くを流れる川で冷やした果物を、手で編んだだろうと思われる大きな(かご)に入れて持ってきた。


 側近たちに(はさ)まれて座っている王女は、物珍しそうに辺りをキョロキョロ見回しているが、イノンドの部下二人に挟まれているバーネットは、苦虫を()(つぶ)したような顔をして座っている。


『あの二人が大人しいと不気味だ』何かの前触れのように呟くシュール。

「先を、争って、ロイの隣、座る、思った」アニスも不思議に思っているらしい。


「さっき釘を刺しておいたんですよ。今度ケンカしたら、無条件で帰ってもらうからと言っておきました」ニッコリ笑っておいしそうに果物を食べるイノンド。

「助かります」ホッとするロイ。


「でも、あの冷静なバーネットがあんなに情熱的だったなんて、知らなかったわ」話に入ってくるディル。


「昔の彼女はどんな感じだったの?」ロイが果物を取りながら聞くと「堅物(かたぶつ)。勉強虫ね。遊びなんかそっちのけで、いつも難しい本を読んでました」


「研究所にいたとき、そんな感じだったな」思い出すロイ。「彼女にとって、王女との出会いはプラスだったのかもしれないな」村人と話しだすバーネットを見る。


「それ、王女も一緒、思う」

「そうか。いいように変わってるんだったら、もう少し我慢するよ」


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