4 意外な情報
その日の午後三時。
リビングでのティータイム。
「ロイ様。バーネットさんがお見えになりませんけど、何をなさっていらっしゃるんですか?」
いつまで経っても顔を出さないので所在を確認する王女。ライバルの動向は気になるらしい。
「まだ医務局にいると思いますよ。忙しくて手が離せないんじゃないかな?」
「ああ、彼女はお医者様でしたね」
『なんか、日に日に逞しくなっていくような気がする』すっかりクルーの顔になっている王女が心配になるシュール。
「そういえば、バーネットの出身星がどこか聞いてるか?」マーティに聞かれ「いや、まだだけど」
「確認しといたほうがいいぞ。もし反対のほうへ来てたら、早めに帰したほうがいいからな」
「そうだな。様子を見るついでに確認するよ」コーヒーを飲み干すと、リビングから出て医務局へ向かった。
総合監視ルームへ行くと、バーネットはコンピュータの前に座ってデータをインプットしていたが、入ってきたロイに気付き「どうしたの?」と聞いてくる。
「忙しい?」
「大分落ち着いてきたわ」
「そうか。ティータイムの時間なのに顔を出さないから、様子を見にきたんだ」
「あら、もうそんな時間?」腕時計を見る。
「手が離せそうだったら、少し時間を取ってくれないか?」
「いいけど、何かあったの?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「そうなの。じゃあ、これだけ入力してしまうから、先に休憩室へ行ってて」
総合監視ルームから出ると、通路奥にある休憩室へ向かう。
『ねえ、もし反対のほうへ来てたら、すぐに帰すの?』シュールが聞いてくるので「できればそうしたいけど、医局長から延長乗艦させてほしいと言われてるから、仕事の進み具合をみて決めることになるな」
『となると、バーネットを先に追い出すのは無理か』作戦でも練り直すのか、考え込む。
しばらくして、バーネットが二人分のコーヒーを持って入ってきた。
「どうぞ」ロイにカップを渡すと向かいに座る。
「これ、インスタントじゃないよね?」香りを嗅ぐと「レギュラーよ。私が淹れたの」
一口飲むと「ン、相変わらずおいしい」
「サントス好きでしょう。ちょうど豆があったから。で、聞きたいことって何?」
「ああ。本当は、君を乗せるときに聞かないといけないことだったんだ、君の出身星」
「あら、言ってなかった?」
「ああ、聞いてないよ」
「でも、聞いてどうするの?」
「反対のほうに来てたら、帰るのが大変だろう?」
「その事だったら気にしなくていいのに」
「心配してる人達のことを考えなきゃダメだよ」
「父に話してあるから大丈夫よ」
「とにかく教えてくれないか? 艦に長く乗るからには、いろいろと手続きも必要になってくるんだ」
「それもそうね。乗艦パスの延長手続きをしてもらわないといけないし。私はバーニングゾーンの出身よ」
「エッ、本当!」ロイの驚きようを不思議に思い「なに? どうしたの?」
「いや、僕たちが向かってるところがバーニングゾーンなんだよ」
「エエッ!」今度はバーネットが驚く。
『すごい偶然、と言うべきなのかな?』気味の悪いものを感じるシュール。
「バーニングゾーンのどの星?」
「ルバーブ系、第五惑星ローゼルの衛星の一つ、シルバーデザートという小さな星よ」
「第五惑星ローゼル? もしかして、ゴールドデザート星の隣とか?」
「知ってるの!」
「マジかよ。ちょっと怖いぞ」ピンポイントで重なる偶然があるのか? と考えしてしまう。
「あんな小さな衛星を知ってるなんで、どうして?」
「その星に向かってるんだよ」
「本当なの! でも、何しに行くの? 自然保護の視察?」
「ちょっと探してるものがあるんだ」
「フウン、そうなの」
「ところで、ゴールドデザート星に知ってる人がいるかな?」
「叔母が住んでるわ」
「本当? 着いたらその人を紹介してくれないかな?」
「いいわよ」
「ありがとう。助かるよ」
「じゃあ、私はこのまま乗ってていいのね?」
「もちろん。出身星まで送ることになるからね」
「よかった。これで降りろと言われなくて済むわ」
『う~ん、追い出さなくてよかったのか?』悩みだすシュール。




