52-1 パーティの目的
「アニス。二人を独り占めしてると、周りの女性から妬まれるわよ」
少ししてからバーネットに耳打ちされ「独り占め、してない」慌てて否定すると、いつの間にか大勢の女性に囲まれていることに気付き、食べる手を止める。
「どうした?」アニスの様子に気付いたマーティが声を掛ける。
「あ、あの……」
「なんだ、周りが気になるのか?」
「もしかしたら邪魔かもしれないな。向こうのテーブルに行こう」
飲み物を取ると、テラスに近いところに設けられている丸テーブルへ移動する。
「マーティ。向こうのテーブルにデザートがあるぞ」
「食べ終わったら見にいくか」
「こんな所でも甘党レーダーが働くのね」呆気に取られるバーネットだが「アニス、私たちもあとで行くわよ」準備に入る。
さすがにテーブルに座ると、周りで見ていた女性たちも迂闊に近寄れないらしく、遠巻きにソワソワしている。
そんな女性たちの間から星王が現れると「ロイ君、ちょっといいかね? 楽しんでるところを申し訳ないが、少し時間をくれないか?」
「構いませんよ」ゆっくり立ち上がると「では、ロイ君を借りていくよ」マーティたちに声を掛け、ロイを部屋の奥へと連れていく。
「どんな話をするか、なんとなくわかるわね」二人を見送るバーネット。
「想定内だ」
「シュール、一緒。大丈夫、かしら?」心配顔でマーティを見ると「ロイが難聴にならないことを祈ってやるか」
『なんだろう』警戒するシュール。
剣はまた小さくなって、チェーンを通されてロイの首からぶら下がっている。
星王はロイを部屋の隅に連れていくとボーイを呼び、ワイングラスを取ると一つをロイに渡して「きちんと礼を言わせてもらいたくてな。王女を助けてくれてありがとう」
「礼には及びません。それより王女を誉めてあげてください。ウッドラフ星の星王が行っていた悪事を暴いたのですから」
「あれには驚いたよ。まさか、彼があんな事をしてたとは思わなかったからね。いまだに信じられないよ」
「そういえば、昔からのお知り合いだそうですね」
「学生時代からの友人だよ」
「そうですか。さぞお心を痛めておられるでしょうね。ご心境をお察しします」
「悪事を隠すために私の娘を手に掛けるとは……」言葉を詰まらせて目を伏せる。
『それはショックだよね』この事には同情するシュール。
「奴は昔から金儲けが好きでね。いろんな事をやっては警察本部長を困らせていたよ」
「そういう人だったんですか」
「奴はもうダメだろう」肩を落とす星王に「今はその事は忘れてください。王妃が心配してこちらを見ておられますよ」
王妃は玉座の前に立ち、お付きの女性たちに囲まれてこちらを見ている。
「あれも、王女が無事に戻ってきたことに関しては喜んでるが、向こうの王妃と仲が良かったので、心を痛めている」
「ここは星王が先頭に立って、皆さんを元気づけてあげてください」
「ああ、わかってる」星王の顔に笑顔が戻ると「ところでロイ君」改めて声を掛けてくる。「王女との結婚なんだが、考えてくれてるだろうね?」
『出た! 諸悪の話!』構えるシュール。
(言葉を応用することをどこで覚えたんだ?)と思いつつ「そのことで、僕も星王に話があるんです」
「そうか。ここでは話の内容を聞かれてしまう恐れがあるから、別の部屋へいこう」




