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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
218/1021

52-1 パーティの目的

 

「アニス。二人を独り占めしてると、周りの女性から(ねた)まれるわよ」


 少ししてからバーネットに耳打ちされ「独り占め、してない」慌てて否定すると、いつの間にか大勢の女性に囲まれていることに気付き、食べる手を止める。


「どうした?」アニスの様子に気付いたマーティが声を掛ける。

「あ、あの……」


「なんだ、周りが気になるのか?」

「もしかしたら邪魔かもしれないな。向こうのテーブルに行こう」


 飲み物を取ると、テラスに近いところに設けられている丸テーブルへ移動する。


「マーティ。向こうのテーブルにデザートがあるぞ」

「食べ終わったら見にいくか」


「こんな所でも甘党レーダーが働くのね」呆気に取られるバーネットだが「アニス、私たちもあとで行くわよ」準備に入る。


 さすがにテーブルに座ると、周りで見ていた女性たちも迂闊(うかつ)に近寄れないらしく、遠巻きにソワソワしている。


 そんな女性たちの間から星王が現れると「ロイ君、ちょっといいかね? 楽しんでるところを申し訳ないが、少し時間をくれないか?」


「構いませんよ」ゆっくり立ち上がると「では、ロイ君を借りていくよ」マーティたちに声を掛け、ロイを部屋の奥へと連れていく。


「どんな話をするか、なんとなくわかるわね」二人を見送るバーネット。

「想定内だ」


「シュール、一緒。大丈夫、かしら?」心配顔でマーティを見ると「ロイが難聴(なんちょう)にならないことを祈ってやるか」



『なんだろう』警戒するシュール。


 剣はまた小さくなって、チェーンを通されてロイの首からぶら下がっている。


 星王はロイを部屋の隅に連れていくとボーイを呼び、ワイングラスを取ると一つをロイに渡して「きちんと礼を言わせてもらいたくてな。王女を助けてくれてありがとう」


「礼には及びません。それより王女を誉めてあげてください。ウッドラフ星の星王が行っていた悪事を暴いたのですから」


「あれには驚いたよ。まさか、彼があんな事をしてたとは思わなかったからね。いまだに信じられないよ」


「そういえば、昔からのお知り合いだそうですね」

「学生時代からの友人だよ」


「そうですか。さぞお心を痛めておられるでしょうね。ご心境をお察しします」

「悪事を隠すために私の娘を手に掛けるとは……」言葉を詰まらせて目を伏せる。


『それはショックだよね』この事には同情するシュール。


「奴は昔から金儲けが好きでね。いろんな事をやっては警察本部長を困らせていたよ」

「そういう人だったんですか」


「奴はもうダメだろう」肩を落とす星王に「今はその事は忘れてください。王妃が心配してこちらを見ておられますよ」


 王妃は玉座の前に立ち、お付きの女性たちに囲まれてこちらを見ている。


「あれも、王女が無事に戻ってきたことに関しては喜んでるが、向こうの王妃と仲が良かったので、心を痛めている」


「ここは星王が先頭に立って、皆さんを元気づけてあげてください」


「ああ、わかってる」星王の顔に笑顔が戻ると「ところでロイ君」改めて声を掛けてくる。「王女との結婚なんだが、考えてくれてるだろうね?」


『出た! 諸悪(しょあく)の話!』構えるシュール。


(言葉を応用することをどこで覚えたんだ?)と思いつつ「そのことで、僕も星王に話があるんです」

「そうか。ここでは話の内容を聞かれてしまう恐れがあるから、別の部屋へいこう」


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