51 歓迎パーティ
「数千年前にタイムスリップしたみたいだな」物珍しそうに城内を見るロイ。
前から甲冑を着た兵士たちが、ガチャガチャ音を立てて歩いてきそうな雰囲気が漂っている。
先をいく執事が、王冠が付いているドアを開けると「こちらでお待ちください。ご用意が整いましたらお迎えに参ります」と中に入るよう促す。
その部屋は貴賓室らしく、調度品が置かれた広い部屋だった。
全員がソファに座ると数名のメイドがワゴンを押してきて、中央テーブルにカップを置いていくので「この城はかなり古そうですね」ロイが話し掛けると手をとめ「約六千年前に建てられたものでございます」にこやかに答えるので「六千年前ですか? それは由緒あるお城ですね」
メイドはお茶を配り終わると「失礼いたします」と一礼して出ていった。
それから三十分くらい待たされただろうか。先ほどの執事がやってくると、用意が整ったので会場まで案内すると、部屋から出るように言ってきた。
廊下に出ると城の奥へ進み、広い通路へでると、正面に衛兵が両脇に立つ大きな扉が現れ、その扉の前までくると二、三分待たされて内側に扉が開き「どうぞ、お入りください」執事が入るよう促すので中に入ると、大きな拍手が起こる。
この部屋は謁見の間らしく、ドアの正面奥に玉座が並び、中央に星王、向かって左に王妃、右に王女が座っている。
そして、玉座とロイたちの間には、埋め尽くすほどの人が正装して英雄たちを出迎えた。
その数の多さに圧倒されて足を止めると、先ほどの執事がロイのところへ来て「星王の前まで進んでください」と耳打ちしてくる。
今さら引けないので、大きな拍手に囲まれて赤い絨毯の上を進んでいき、玉座の前までくると星王が立ち上がり「静かに!」と言うと拍手が止む。
星王はロイたちの顔を見ると「彼らは、我が娘サントリーナを窮地から救ってくれた。よってその名を称え、勲一等を授ける」
会場はまた大きな拍手で埋まる。
その後、執事の指示に従って玉座の前に一列に並ぶと星王が降りてきて、一人ずつメダルを掛けると握手をし、全員がメダルもらうと正面に向き直るよう言われ、招待客のほうを向くと、また大きな拍手が起こった。
「娘の生還を祝って今夜は無礼講だ! 大いに騒いでくれ!」
星王の合図で音楽が掛かると、王女が玉座から降りてきてロイの前に立ち、手を差しだす。
ダンスの相手をしろということ。
「申し訳ないのですが、まだギブスが外せないので、医者から運動は控えるよう言われてるんです」
「ああ、そうでしたわね。申し訳ございません。では、わたくしもダンスは控えますわ」
「それはダメですよ。王女のお相手をしたい人がたくさんいるんですから」
「わたくしは、ロイ様に相手をしていただきたいのです」
ロイの隣へ行こうとすると複数の男性からダンスの誘いがかかり、取り囲まれてしまったので断り切れず、渋々ダンスホールへ向かう。
名残惜しそうにこちらを見る王女。
「不謹慎だけど、ケガをしててよかった気がする」まだ右腕と右太ももにギブスを着けている。
「怪我の功名か?」そう言うマーティも、まだ肋骨を保護するコルセットを着けているので、ダンスの声が掛かっても断わる口実ができ、些かホッとしている。
イノンドは管理局の制服を着ているせいか奥様たちに囲まれ、賑やかに話をしている後ろで、旦那衆が困った顔をして見ている。
「イノンドはマダムキラーらしいな」
「なんか納得してしまう」
「さて、せっかく来たんだ。何か食べるか」
「そうだな。アニスもお腹空いたろう?」
二人の間に立っている彼女に声を掛け、バーネットも連れて近くのテーブルへ食べ物を取りにいくと、色とりどりの豪華な料理に、アニスの「あれ何?」がまた始まった。
マーティに料理を取ってもらい、おいしそうに食べる顔を見て、ロイたちも彼女の変化に満足していた。




