49-3 意外な真相
「その後、王子の部屋へ戻ったんですね?」
「……そうですわ。戻る間、わたくしは、何もお話できませんでした。王子も話し掛けてきませんでしたし。でも、お部屋に戻った後、わたくし、思い切ってお話しましたの。研究室で行われていることはとてもいけないことですし、見過ごすことはできませんでしたから」
「王女はとても強い方ですね。相当ショックを受けたでしょう? それなのに、勇気ある行動ができるなんて、すごいですよ」
「わたくしも、最初はどうしたらいいか、わかりませんでしたわ。でも、麻薬を作ることは、どんな理由を付けても正当化できませんもの。何とかして止めなければいけないと、思いましたの」
「そのとおりです。王子は何と言いましたか?」
「複雑な表情をされて、何もおっしゃいませんでしたわ。王子にも、どうしたらいいのか、わからなかったのだと思います。だから、わたくしに見せたのだと思いますわ」
「そうですか。王子は誰にも相談できなくて、一人で苦しんでたんでしょう。考えた挙句、昔から懇意ある王女に見せることにした」
「そうだと、思いますわ」
「しかし、その後の王子の行動が逆になったはなぜだ?」
「その後、何が起こったんですか?」
「わたくしたち、どうやってこの事を解決したらいいか、話し合うことにしましたの。その時、王子がメイドに飲み物を持ってくるよう伝えて、落ち着くために飲みましたわ。でも、少ししたら体が重くなってきて、わたくしたちは動けなくなってしまいましたの」
「紅茶に何か仕掛けがしてあった」
「そうだと思いますわ。意識がモウロウとしてきたころ、ボディガードらしい男が数名入ってきて、わたくしは担がれ、あのエレベーターに乗せられて、再び研究所へ運ばれました。そして、ある部屋へ連れていかれて、何か薬を打たれた後、気を失ってしまいましたの」
「ここから今回の事件が始まったのか」なるほどと頷くロイ。
「王女に秘密を知られたからには、このまま返すわけにいかなくなった。しかし、長く監禁するわけにいかない。そこで、どうしようかと策を練った」筋書きを考えるマーティ。
「まず、王子をどうにかしなければならなかったはずだ。
王女を監禁したと知れば、何をするかわからなかっただろうからな。
王子が王女に好意を持ってることを知ってたので、二人を結婚させてしまえば、王宮内に閉じ込めておくことができる。
この話を持ちだして王子を納得させたんだろう。しかし王女は一人娘。勝手にそんな事したら問題になるんじゃないか?」
「両方の星を二人が統治すると持ち掛ければ、問題ないよ」
「なるほど」
「王子は、それでいい、思った、かしら?」複雑な心境になるアニス。「王女と結婚。だけど、王女、ずっと監禁、される。誰にも、会えない。王子、それでいい、思った、かしら?」
「もしかしたら、王女を逃がすチャンスを作ろうとしたのかもしれないな」
「そんな事したら、自分の親を裏切ることになるぞ」
「その覚悟はできてたんじゃないか? だから王女を研究室へ連れてったんだ」
「自分からは親の悪事をバラせない。だから、昔から懇意のある王女に話し、王女の父親から説得してもらおうと考えたというのか?」
「そのほうが自然だろう?」
「王子は、お心を痛めていましたわ」
「今頃、あなたが解放されてホッとしてるんじゃないですか?」そう言われて、複雑な顔をする。
「とにかく、これで全貌がわかりました」
「王子はどうなってしまいますの?」
「イノンドに話しておきますから、心配しないでください」
「ありがとうございます」ホッとして笑みを浮かべる。




