47-2 台風の消去法
作戦会議室に戻ると、負傷した右脚を庇いながら椅子に座る。
「ロイ、怒った、初めて、見た」コーヒーを持ってくるアニス。
「俺だったらとっくに追い出してる」カップを受け取ってロイの隣にゆっくり座るマーティ。
「彼女たち、エル、感謝、するべき」ロイとエルにカップを渡してマーティの隣に座る。
向かいに座り、黙ってコーヒーを飲むエルに「なぜ彼女たちに助け舟を出した?」
マーティが理由を聞くと「あのまま追い出しても止める気配がなかったからだよ。きっと、他の船に移っても続ける。たとえ二人を別々の船に乗せてもね。そうなったら、他の誰かが迷惑を被るだろう? だったら、ここで止めるよう、灸を据えるのが得策と思ったんだ」
『なるほど。確かに一番いい方法だと思う』納得するシュール。
「まあ、懲りただろうから、もう止めるだろう」
ロイが黙っているので『ねえ、もう夕方だから、仕事しないで外へ遊びに行こうよ』シュールが気分転換を進めると「エル。急ぎの仕事はあるか?」マーティが確認する。
「そうだね」持っているタブレット内のデータを見ると「来月分の、物資補給金の書類にサインが欲しいな。今日中に回してほしいって経理から催促されてるんだ」
タブレットをマーティに渡すと目をとおし「これでいいんじゃないか?」ロイに渡すと内容を見て「そうだな」付属のペンでサインをするとエルに返す。
エルは受け取ると「他にはないよ」サインを確認して送信するので「では、今日はここまでにするか」マーティがコーヒーを飲み干す。
「ロイ。マーティと、外、食事、行ったら?」
「エッ?」アニスを見ると「こっち、大丈夫。行ってきて」
「でも」
「たまに、いいと思う。でも、薬、飲んでる、お酒ダメ」と言ってエルを見ると「行ってきたら。気分転換になるよ」
『行ってきなよ。たまには息抜きも必要だよ』
(シュールまで)
「では、お言葉に甘えて、うまいものでも食べにいくか」席を立つマーティ。
「でも」戸惑うロイに「行ってきなよ」声を掛けるエル。「いつまでも、そんな顔は見ていたくないよ」
「僕よりエルのほうが息抜きが必要なんじゃないか?」
「僕は適当にしてるから」
「剣、預かる」アニスが手を出す。
「でも」
『行ってきなよ。今日はアニスと一緒にいるから』
(シュール)
「ロイ、剣」再度手を出すアニスに剣を渡すと「おやつ抜きは艦の中だけだから」エルがタブレットを見ながら呟くので「何だって?」戸惑うロイに「今夜だけお許しが出たから、食べに行くぞ」嬉しそうなマーティと一緒に会議室から出ていく。
この日の夜、ロイに怒られたのが効いたらしく、王女とバーネットは大人しくしていた。




