46 艦の中の台風
その後、ロイたちは作戦会議室へ行き、エルを交えて遅れた日数の調整具合を話し合った。
「では、ラナタ星を発って、電気室の検査が済み次第、ワープを一回入れることでいいね?」エルが更新したタイムテーブルを見ると「それで計算が合うはずだ」データを確認するマーティ。
「予定どおりにいかないな」ため息を吐くロイに「アクシデントも旅の面白さ、と誰かがコラムに書いてたのを読んだことがある」とマーティが言うので「トラブルメーカーは別だよ」
「鋭い突っ込みがきた」
「最近、リビングとここに入り浸ってるからだよ。何か起きてるんだろう?」
「まあね。その二ヶ所が安全エリアなんだよ」
この安全地帯の外側では、ものすごい嵐が近辺を巻き込んで吹き荒れていた。
王女とバーネットが、顔を合わすたびに騒動を起こしているからである。
困るのは巻き込まれる近辺。ところ構わず始めるので、迷惑なことこの上ない。
「あら、自分勝手な人がこんな所にいるわ」
「いい加減にしないか! この方をどなただと思ってるんだ!」
「自分勝手でワガママな、世間知らずの王女様でしょう?」怖いもの知らずのバーネット。
「横恋慕なんで、みっともないことはやめていただきたいわ」真っ向から対立する王女。
「なんですって!」
「あら、何かお気に障るようなことを言いましたかしら?」
そして、この争いは逐一ロイの耳に届いていた。
「ロイ、また苦情がきてるよ。今度はラウンジでやったんだって。ゆっくり休憩できないって、みんな困ってるよ」エルがため息交じりに報告してくるので「まったく、いい加減にしてくれないかな」頭を抱えるロイ。
『一回きつく言ったほうがいいよ。このままだと彼女たち、みんなに迷惑かけてると気付かないよ』シュールもウンザリしている。
「何度言っても、顔を合わせるようにワザと行動してるんだ。いくら言っても気が済まないんだろう。忠告は無駄かもしれないぞ」
マーティが水を差すようなことを言うので「でも、彼女たちのせいで他のクルーが迷惑してるんだから、何とかしないといけないだろう?」
エルに言い返されると「王女を星まで送る間だけなんだけど、一日中あの状態じゃ困るから、あとで注意しとくよ」ロイは再度二人を呼んで注意した。
次の日の夕方。
作戦会議室で離陸に向けて打ち合わせをしていると、血相を変えたアニスが飛び込んできた。
「ロイ! 王女とバーネット、リビング、ケンカ、始めた」
「なんだって?」
「手、付けられない。早く、止めて」
昨日の注意はまったく効果がなかった。
『注意するだけじゃダメだよ。どっちかをイノンドの船に移らせたほうがいいよ』
シュールの案に(考えたほうがいいな)と思いながら会議室を出る。




