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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
208/1023

46 艦の中の台風

 

 その後、ロイたちは作戦会議室へ行き、エルを交えて遅れた日数の調整具合を話し合った。


「では、ラナタ星を発って、電気室の検査が済み次第、ワープを一回入れることでいいね?」エルが更新したタイムテーブルを見ると「それで計算が合うはずだ」データを確認するマーティ。


「予定どおりにいかないな」ため息を吐くロイに「アクシデントも旅の面白さ、と誰かがコラムに書いてたのを読んだことがある」とマーティが言うので「トラブルメーカーは別だよ」


(するど)い突っ込みがきた」

「最近、リビングとここに入り(びた)ってるからだよ。何か起きてるんだろう?」

「まあね。その二ヶ所が安全エリアなんだよ」


 この安全地帯の外側では、ものすごい嵐が近辺を巻き込んで吹き荒れていた。

 王女とバーネットが、顔を合わすたびに騒動を起こしているからである。

 困るのは巻き込まれる近辺。ところ構わず始めるので、迷惑なことこの上ない。


「あら、自分勝手な人がこんな所にいるわ」

「いい加減にしないか! この方をどなただと思ってるんだ!」


「自分勝手でワガママな、世間知らずの王女様でしょう?」怖いもの知らずのバーネット。

横恋慕(よこれんぼ)なんで、みっともないことはやめていただきたいわ」真っ向から対立する王女。


「なんですって!」

「あら、何かお気に(さわ)るようなことを言いましたかしら?」


 そして、この争いは逐一(ちくいち)ロイの耳に届いていた。


「ロイ、また苦情がきてるよ。今度はラウンジでやったんだって。ゆっくり休憩できないって、みんな困ってるよ」エルがため息交じりに報告してくるので「まったく、いい加減にしてくれないかな」頭を抱えるロイ。


『一回きつく言ったほうがいいよ。このままだと彼女たち、みんなに迷惑かけてると気付かないよ』シュールもウンザリしている。


「何度言っても、顔を合わせるようにワザと行動してるんだ。いくら言っても気が済まないんだろう。忠告は無駄かもしれないぞ」

 マーティが水を差すようなことを言うので「でも、彼女たちのせいで他のクルーが迷惑してるんだから、何とかしないといけないだろう?」

 エルに言い返されると「王女を星まで送る間だけなんだけど、一日中あの状態じゃ困るから、あとで注意しとくよ」ロイは再度二人を呼んで注意した。


 次の日の夕方。

 作戦会議室で離陸に向けて打ち合わせをしていると、血相を変えたアニスが飛び込んできた。


「ロイ! 王女とバーネット、リビング、ケンカ、始めた」

「なんだって?」

「手、付けられない。早く、止めて」


 昨日の注意はまったく効果がなかった。


『注意するだけじゃダメだよ。どっちかをイノンドの船に移らせたほうがいいよ』

 シュールの案に(考えたほうがいいな)と思いながら会議室を出る。



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