44-1 浮上する謎
さらに二日後のお昼は、マーティと事件の結果を知らせにきていたイノンドと一緒に、リビングで今後の打ち合わせをしながら取った。
「王族制度は廃止されるそうです。王宮の研究所は我々の監督下に置かれることになりました。
薬で体内組織を変えられてしまった人達は宇宙保健局の本局へ運び、薬を製造していた研究員の手を借りて、解毒剤を作ることになってます。
王宮に勤めてた人達は、それぞれの罪で服役するもの、執行猶予がつく者、無罪になる者に分けて調書を作ってます」
『すごく時間が掛かりそうだね』一緒に話を聞いているシュール。
「殺人マリオネットとして売られてしまった人達はどうするんですか?」
「買い手のリストを元に、捜査を始めました」
「うまく保護できるかどうかですね」
「そうなんですよ。買い手に悟られないように接近しなければいけないですからね。もし殺人命令が出てしまったら、誰にも彼らを止めることはできないでしょう。とにかく、これ以上、罪を重ねないようにしないといけないので、慎重に行動してます」
「殺人マリオネットにされてしまった人達は、元の体に戻れる可能性はあるんですか?」
「問題はそれです。これから研究することになりますから、今は何とも言えませんが、研究者の人達は、完全とまではいかなくとも、日常生活が送れるくらいまで戻せるよう努力すると言ってくれているので、彼らの腕次第ですね」
「そうですか。いい薬ができるといいですね」
「ところで、乗せてもらってる牢の中に閉じ込められていた人達はどうしてますか?」
「みんな元気を取り戻しつつありますよ」
「そうですか。それはよかった。船の手配ができ次第、引き取りますので、もう少しお願いします。ところで、王女はどうしておられますか?」
「フゥ」ロイが大きくため息を吐くので「何かあったんですか?」心配そうに聞き返す。
『艦に乗せること、許可しなければよかったのに』今さらながら文句を言うシュール。
「彼女はとても元気だ」静かに答えるマーティ。
「そうですか。何かと大変だと思いますが、王女という立場にいる方ですから、よろしくお願いします」
「お願いされてもな」
「マーティ。それはどういう意味ですか?」
「見てればわかる」
「見てれば、ですか?」
『自分じゃなかったからって、簡単に言うんだから』文句を言うシュール。
「ロイ。何があったんですか?」
「僕からは言えません」
「そういえば、今回の経緯を王女から聞きだせたのか?」マーティが話題を変えると「一応聞いてみましたが、ブロードリーフ王子から頼まれただけで、詳しくは知らないの一点張りなんですよ」
「頼まれた?」
「日時を指定されて、その日に回遊するよう言われたそうです。それ以上は話してもらえませんでした」
『ワガママ王女は何を隠してんだ?』目の敵にしていることがよくわかるシュールの言い方。
「では、その王子は何と言ってるんだ?」
「それが、行方不明なんですよ」




