43-1 事後処理の副産物
「エッ?」バーネットは驚いてロイを見ると「王女と結婚するの?」
「僕も今、初めて聞いた」何が起こっているのか理解できていない。
『何を勝手に決めんのよ! ロイは旅の途中なんだから、こんな所で脱線しないよ!』怒鳴るシュールの声を聞いて(起きてたのか。煩くなるぞ)
「王女、彼は初耳だと言ってるけど」
「当然ですわ。パーティのことはお話ししていませんもの」
「そうじゃなくて、いつ、僕が王女と結婚すると決まったんですか?」
「今日ですわ」
「ハ? 今日?」
「先ほどお父様にお話ししたら、是非にとおっしゃってくださいましたの」
「それじゃ、王女が一方的に言ってるだけなのね」
「一方的ではありませんわ。ロイ様は命を懸けてわたくしを救ってくださいましたし、わたくしに優しくしてくださいましたわ」
「あなたのためだけじゃなく、大勢の人のために彼らは動いたのよ」
「ロイ様は、閉じ込められているわたくしを救いに、危険を承知で研究所に潜り込んでくださいましたのよ」
「閉じ込められていたのはあなただけじゃないでしょう」
「やめてください! とにかく、僕は結婚しません!」
「ロイ様。ロイ様はわたくしのことがお嫌いなのですか?」
「王女の何が不満だと言われるのですか? ロイ殿!」
『今度はロイ殿?』新しく言葉をインプットするシュール。
「いや、そういうわけではありません」
『ロイ! あやふやな言い方したらダメ!』
「事と次第によっては暴言とみなします」
「そういう意味で言ったんじゃないですよ」
「彼が王女を助けたのは同情からよ。あなたは同情と愛情を履き違えてるわ!」
『バーネットの言うとおりだ!』
「そんなことありませんわ! ロイ様の優しさはウソではありませんでしたもの!」
「大抵の人は困ってる人に優しいでしょう? まったく、こんな一方的なこと、認められないわ」
「コラッ! 口を慎め!」側近が怒鳴ると「フン!」とソッポを向く。
「あなたに認められなくても結構ですわ。お父様は認めてくださったのですから」
「あなたのお父様がどんな人であれ、彼の気持ちを聞かずに事を運ぶなんて、彼に失礼でしょう?」
『そうだ! ロイはオモチャじゃない!』
「いい加減にしろ!」と怒鳴る側近を止めると「とにかく、この事はラナタ星の星王であるお父様がお決めになったこと。あなた個人の意見など通りませんわ」
「私事に権力を使うなんて卑怯だわ!」
「私事ではありませんわ! ロイ様が星王になれば、ロイ様の指導力を持ってラナタ星は安泰します。星が安泰すれば住民の生活も安泰します! これが私事になるのですか!」
「なんとお優しい方なのだろう。星のことを第一にお考えになっておられる。それでこそ我が星の王女だ」側近たちは感動しているが『何言ってんの! ロイはお父さんの跡を継いでファルネス系の統治者になるんだよ! 一つの星へお婿になんか行かないからね!』
(ハハ、婿ね)
「とにかく、こんな自分勝手なこと認められないわ。私もラナタ星に行きます!」頭から溶岩を吹きだしそうな勢いのバーネット。
「どうぞいらしてください! そして、ぜひパーティに出席していただいて、わたくしたちの仲を引き裂くことができないと実感していただくわ!」
「誰が実感なんかしますか!」
『私だってそんなこと認めないからね! ロイの旅を邪魔する奴は許さない!』
(シュール。そこで怒鳴っても、誰にも聞こえないよ)
『ロイに聞こえてるじゃないか!』
(うん、確かに)キンキンと、頭の中に彼女のどでかい声が響いている。
「そういうことなので、私も艦に乗せてもらうわ。荷物を持ってくるから、部屋を貸してちょうだい!」バーネットは肩を怒らせてリビングから出ていった。




