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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
202/1020

42 増える事後処理

 

 そして二日が過ぎた日のお昼、バーネットが艦にやってきた。


 リビングに入ってくると「ケガの具合はどうかしら?」と聞いてくる。


「まだ動かすのが大変だけど、落ち着いてきたよ」

「そう。でも、利き腕をケガしてしまったから不便でしょう?」


「そうでもないよ。僕は両方使えるんだ」

「あら、そうなの。器用な人ね」


「本当は左利きなんだけど、子供のころ、馬から落ちて左腕を骨折したことがあるんだ。その時、右手を使うことを覚えたんだよ」


「そうだったの」

「そういえば明日、星へ帰るんだって聞いたよ」

「ええ。やっとよ」


 第一、第二研究室にいた研究員たちは、開発した薬の解毒剤を作るために宇宙保健局に移動したが、彼女を含む医務室にいた者やその他の研究者は引継ぎを行い、身元を登録して解放されることになった。


「家族の人に連絡は?」

「一昨日したわ」


「ビックリされただろう?」

「ええ。死んだと思って、お葬式をしてお墓を建てたと言われたわ」


「そうか」

「こうやって自由になれたのはあなたのお陰よ」


「みんなが力を合わせたからだよ。僕たちだけの力じゃない」

「でも、キッカケを作ってくれたわ」


「そのキッカケを作ってくれたのは、王女だよ」

「そうね。そういえば、王女はどうしてるのかしら?」


「この艦にいるよ。星まで送ってくことになったんだ」

「この艦に? どうして管理局の船じゃないの?」


「彼女の父親からぜひ来てほしいと、招待されたんだ」

「お礼を言いたいということね?」


「そうらしいよ。ところで、なにかあった?」

「実は、お願いがあって来たの」

「お願い?」


「イノンドから、牢に閉じ込められてた人達のなかで、帰る宛のない人達を乗せたと聞いたけど」


「人体実験室にいた人達が予想以上にいたから、部屋の空が無くなってしまったらしいんだ。臨時の船が来るまでの間だけ、一時的に乗せてるんだよ」


「そうなの」

「それで、お願いってどんな事?」


「彼らの世話を手伝わせてほしいの」

「エッ?」


「全員ではないけど、彼らの健康管理は私もしてたらか、役に立てると思うわ」

「ダメだよ。そんな事したら、星へ帰るのが遅くなってしまうだろう?」


「両親には話してあるし、納得してくれたわ。医者として、できる限りのことをしてきなさいって」

「でも」


「せめてそのくらいはしてあげたいの。一緒に解放される日が来ることを願ってきたのよ。社会復帰できるよう、手助けするのは当然だわ」彼女の熱意と一理ある理由を聞いて「わかった。じゃあ、ラナタ星を出発するまでお願いするよ」


「そんな短期間じゃ」

「それ以上はダメだよ」

「なぜ?」


「君の気持はわかるよ。一緒に頑張ってきたことも、彼らに関する情報を管理局に提供したことも、彼らに対する誠意も理解してる。でも、君の帰りを待ってる家族のことを考えないといけないよ」


「それは……」


 そこへ、側近を(したが)えたサントリーナ王女が入ってきた。


「まあ先生、いらしてたんですの」

「あら王女、ご機嫌いかが?」


「とても元気ですわ」

「それはよかったわ」

「いろいろとお世話になりました」


「私のほうこそ、お礼を言わなければいけないわ。王女がロイたちに助けを求めてくれたから、こうやって今の私がいるんですもの」


「お互い自由になれてよかったですわ。そうですわ。バーネットさんもラナタ星に来ていただいて、わたくしたちの婚約パーティに出席していただきたいわ」


「婚約パーティ?」


「ええ。わたくし、星へ戻りましたら婚約しますの。それに、助けていただいたお礼もさせていただきたいし、ぜひ、わたくしの星へお越しください」


「婚約されるの。それはおめでとうございます。幸運なお相手はどんな方なのかしら?」


「ロイ様ですわ」


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