41 隠し事はできない
そしてロイの退院の日、イノンドが病室に来ていた。
「ほとんどの荷物は昨日、クラリー夫人たちが持って帰ってくれたので、ないんですよ」右脚にギプスをしているので、多少動きがぎこちないが、何とか歩けるようになっていた。
「なぜかマーティが三日前から来ないので、夫人たちが代わりに持ってってくれたんです」
「そうなんですか」
「イノンドも、まだケガが治ってないんですから、無理しないでください」
「大丈夫です、と言いたいですが、やはり、年を取ると復活するのに時間が掛かりますね」
「復活ですか?」
「そうです、復活です」と苦笑する。
その後、ロイは管理局の車で艦まで戻ると、作戦会議室へ向かった。
部屋に入ると「ロイ! お帰り!」エルが笑顔で出迎え「歩き回って大丈夫なの?」心配顔で聞くので「しばらくは安静にしてろと言われたよ」ぎこちなくいつもの席に座ると「いろいろと迷惑かけて悪かった」頭を下げる。
「今回はいいほうに転んだからいいけど、これからは、こんな無茶なことはやめてよ。何かあったあとじゃ遅いんだからね」
「そうだよな。今回は本当にヤバいと思ったよ」
「マーティと二人して安静にしてなきゃいけないくらいのケガを負うなんて、どんな相手と戦ってきたの?」
「それは、聞かないほうが、いいかも……」
「そういえば、この星の星王が逮捕されたってニュースになってたよ。なんでも、ニュースソースの協力者が宇宙管理局員と潜入捜査して、活躍してくれたお陰で、前代未聞的な悪事を暴くことができたって、大々的にやってたよ」
「ヘェ……そう、なんだ……」
「活躍したっていうニュースソースの協力者って、誰なんだろうね」
「……誰、だろうな……」
「誤魔化せると思ってる?」
「全然」
「よろしい! では、罰として、一週間おやつ抜き!」
「エーッ! また!」
「当然だろう! 何のために旅をしてるかわかってんの? こんな所で潰れるわけにいかないんだよ!」
「それは……わかってる」
「人助けをするなとは言わないけど、程度を考えようよ」
「言い訳になるけど、掘ってみたら、ギガトン級の水素爆弾を見付けてしまったようなものなんだ」
「だからトラブルメーカーだって言ってるだろう! 余計なことを掘り当てないでよ!」
「……すみません」
「わかったら部屋で大人しくしてて!」
「……はい」
「因みに、端っこで黙って座ってるマーティは、三日前からおやつ抜き期間に入ってるから」
「エッ!」テーブルの端を見ると、マーティが悲しい顔をして俯いていた。




