35-3 救出するために
マーティは担架を置き、クローゼットを覆うように崩れ落ちている瓦礫をどかし始めると「ロイ、この中?」アニスもどかし始めるのでバーネットは担架を広げ、診察道具を揃えていく。
何とか扉を開ける広さを確保したが、肝心の扉が内側にひん曲がっていた。
『これじゃ開かないよ!』涙声のシュール。
「畜生!」扉をこじ開けようと取っ手を手前に引くが、ビクともしない。
「マーティ。こっち、蝶番、外れ、かけてる。見て」アニスが扉の右側を指すと『マーティ隠れて! 誰か来る!』シュールが叫ぶ。
「瓦礫の陰に隠れろ」手を振ってバーネットに合図すると、近くの瓦礫の陰に隠れる。
すると、銃を構えた二人の隊員が、辺りを見回しながら歩いてきた。
マーティたちは息を殺し、通り過ぎるのを待つ。
部屋の前を隊員たちが通り過ぎようとしたとき、カンカンカンと部屋の中で何かが転がる音がするとマシンガンを撃ちこむので、天井や壁が落ちてきてモウモウと煙が立つ。
アニスは危うく声を出しそうになり、慌てて口をさえた。
煙が治まると「崩れた破片の音だったらしいな」
「チェ、一体どこに隠れたんだ?」と会話が聞こえてきて、足音が去っていく。
少しして『行ったよ』とシュールが言うので「二人とも大丈夫か?」マーティが瓦礫の陰から出てくると「飛んできた破片で少し切ったけど、大丈夫よ」バーネットが手の甲を押さえて出てくる。
「アニスは?」
「脚を、少し切った。けど、大丈夫」
「あなたは?」バーネットに聞かれ「何かが顔をかすった」頬を触ると血が付いてくる。
「見せて」頬の傷を見ると手早く消毒して薬を塗り「アニスも脚を見せて」
彼女のケガは大したことなく、絆創膏を貼って終わった。
バーネットが自分のケガの治療をしていると「動くな」銃を構える音とともに、部屋の外から落ち着いた男の声が聞こえてきた。「こんな所に隠れてたのか」
王宮護衛隊とは別の、特殊部隊らしき装備を兼ね備えた兵士が二人、銃を構えている。
『ウソ! 全然気配がしなかった!』焦るシュール。
「その服装、王宮護衛隊じゃないな。何者だ?」睨み付けるマーティ。(もしかして、前庭にいた謎の集団か?)
「お前らに説明する必要ないだろう」
「手を上げて出てこい」
銃を突き付けられたのでは従うしかなく、ゆっくり部屋の外へ出る。
「お前らが騒動の原因か?」アニスとバーネットを見ると「もう一人男がいるだろう。どこに行った?」片方の兵士がマーティの胸に銃口を当て「どこに行ったと聞いてるんだ!」胸部を銃の台座で突くので、前のめりになって膝をつく。
「マーティ!」
「動くな!」駆け寄ろうとするアニスとバーネットを止め、さらに銃でマーティを殴ろうとしたとき、レーザー弾が撃ち込まれて二人の兵士が倒れるので、マーティが顔を上げると、奥の森からレーザー銃を持った黒い物体が、月明かりに照らされて走ってくるのが見えた。
その物体が目の前にきてしゃがみ込むと「大丈夫ですの?」と声を掛けてくる。
「お前は……ロサ・モイシー」




