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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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35-2 救出するために

 

 王宮の一階に着いてドアが開くと、北エントランスの右、東側だった。


『さっきは、反対の西側にある倉庫内のエレベーターに乗ったんだよね?』シュールが位置を確かめると「どうやらこの北エントランスは、緊急脱出用に作られたらしいな。西側のエレベーターは王宮に何かあったときに研究所へ逃げるため。反対に東側は研究所に何かあった場合の避難経路」


「その通りよ。今回のように何者かが乗り込んできたとき用に作られているのよ。さあ、急ぎましょう」バーネットが(うなが)すが、マーティは動かず煙の流れを見ている。


『どうしたの? 早くロイのところへ行こうよ』シュールが急かすと(もしかしたら、護衛隊が中に入ってきてるかもしれない)小声で答える。


『なんでそんな事がわかるの?』


(煙の動きを見ろ。さっきまで(よど)んでたのに、今は北側の通路へ向かって流れてる。何か起きた証拠だ。裏庭側で何かあったのかもしれない)


『裏庭側で? じゃあ、もしかしたら、ロイがいた部屋も何かあったかも。ロイが見付かっちゃう!』


(大丈夫だ。あの部屋に入ってクローゼットを開けないかぎり、見付かることはない。危険なのは俺たちのほうだ。ここで奴らに見付かったら、一斉(いっせい)に入ってくるぞ)


『どうするの?』

(周りに目を配れ。何か異変を感じたら教えろ)

『わかった』


 マーティを先頭に、ロイたちがいる部屋へ向かって北側の通路を戻りはじめる。


 月明かりで、夜のわりに明るい通路を裏庭から見えないように(かが)んで進んでいると何回も王宮が揺れ、その度に天井や壁がパラパラと落ちてくる。


「イノンドは何してんだ? 王宮の裏側まで(くず)れるほど流れ弾が当たるのは、さっきより広範囲で撃ち合いをしはじめたということか?」


『ロイ、大丈夫かな』落ち着かないシュール。

「これ以上、天井が落ちてきたら担架が通れないわ」落ちてくる破片を払い()けるバーネット。


 長い通路を東へ向かって進んでいると『マーティ止まって!』シュールの声が聞こえないバーネットがマーティの背中にぶつかる。


「なんで急に止まるの!」

「シッ!」

『伏せて!』


 マーティがバーネットの頭を押さえる。


『窓の外を誰かが通ってる』

「チョッ……」

「シッ!」


 息を殺して、シュールが何か言ってくるのを待つ。


 少しすると『もう大丈夫。行ったよ』と聞いてマーティが手を離すと「何? どうしたのよ」文句を言うバーネットに「敵か味方かわからないが、何者かが裏庭を徘徊(はいかい)してる。大声出すな」注意すると再び歩きだす。


 裏庭に面した通路が終わり、両側に使用人たちの部屋があるところまで戻ると、一層、壁や天井が(くず)れて通路に散乱している。


「どういうことなの? 撃ち合いは前庭でやってるんでしょう? どうして裏側がこんなに壊れてるの?」不安になってくるバーネット。


「マーティ」アニスが不安そうに声を掛けてくる。

「確かにおかしい」考えるマーティ。(どういうことだ? 護衛隊が王宮を壊すようなことはしない。となると、他の何かが動いているのか? 前庭にいる謎集団か?)


『マーティ。早くロイのところへ行こうよ』シュールが急かす。


「これじゃ担架が通れないわ」通路に散らばる瓦礫(がれき)を見るバーネット。

「他に通れるところを探すしかないな」嫌な予感がしてくるマーティ。

『煙が引いてるかな?』心配になるシュール。


 さらに進んでいくと、マーティの不安が大きくなっていく。

 煙が進行方向へ流れだしたからだ。


(煙の流れが変わった。ということは、この先に大きな煙の出口があるということだ。まさか……)


 予感は的中してしまった。

 北側の使用人の部屋のドアが吹き飛んで、跡形(あとかた)もなくなっている。


 慌ててロイがいる部屋を(のぞ)くと裏庭に面した奥の壁が崩れ落ち、その先の森が見えていた。


『イヤァ! ロイーッ!』シュールが悲鳴を上げる。


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