4-1 魔獣の森
走り始めて二時間近く経つと、辺りは真っ暗になっていた。
ライトを点けると偵察機に見付かってしまう恐れがあるので、運転手は暗視スコープを着けて運転している。
「それにしてもでかい森だな。基地を出てからずっと同じ景色だ」暗闇に目が慣れてきたので窓の外を見ると「陸の殆どはこんな感じだ」マーティが反対側の窓の外を見る。
「ところで、聞きたいことがあるんだけど」
「なぜこの森が危険なのか、だろう?」
「そうだ。どう危険なんだ?」
「この星の森は、運河をはさんで右側と左側で土壌の質が違うため、育つ植物の種類が違うんだ。
俺たちがいるこちらは左側。
主に紅葉樹林と呼ばれる、季節によって葉の色が変化する植物が生えてる。
そして、これから向かうもう一つの基地がある右側には、針葉樹林系の植物が生えてるので、一年中、葉が覆い茂ってる。
なぜ分かれて生えてるのかは、わかってない」
「それは面白いな」
「そして、この森では怪奇現象のような不可思議なことが昔から起きてる。異常気象が頻繁に起こり、魔獣の狩場と呼ばれてる」
「で、何が起きるんだ?」
「この森に入った者は正体不明の獣に襲われる。それも複数の獣が目撃されてる。死者こそ出てないがケガ人が多く、記憶喪失になる者までいる」
「獣の捜索はしたのか?」
「何回かな。だが、みんな例外なく襲われ、捜索は打ち切りになった」
「うるさい人間は入ってくるなってことか?」
「まあ、そんなところだろう」
「他には?」
「車が行方不明になる」
「この車は大丈夫か?」
「そう願うしかないな」
「そんな心もとないこと言うなよ」
「本当のことだ」
「で、どんなふうに行方不明になるんだ?」
「俺たちが体験したことを話せば理解できるだろう」
「これだけ広大な森だ。迷わないよう道の至るところに目印を付けてある。あれは、今いた基地を造ろうと、資材を運んでるときだった。俺は現場にいて、第一陣の運搬車を待ってた」
「陸路で運んだのか? 船で運んだほうが効率いいんじゃないか?」
「その案もでたが、外部の人間に目撃されるリスクは極力避けるべきだという意見がでて、車で運ぶことになったんだ」
「なるほど」
「昼過ぎに森へ入ったと運搬車から連絡がきた。森の入り口からあの基地まで車で約十八時間。
着くのは翌朝だ。ところが、運搬車は来なかった。
目印が付いてるから迷うことはないだろうし、事故でも起きたのなら連絡がくるはず。
しかし、運搬車はそのまま行方不明になってしまった。
その日の昼過ぎ、何か不測の事態が起きたのだろうと数名が迎えにいったが、そいつらまで連絡が取れなくなってしまった」
「何が起きたんだ?」
「調べようとしたら森全体に強力な磁気が発生してて、計器類がすべて使えなくなってた」




