35-1 救出するために
『何! 何が起きたの!』ビックリするシュール。
「宇宙管理局が、前庭で撃ち合いをしてる奴らを止めに入ったんだ。急ぐぞ」
エレベーターの呼び出しボタンを押すが、反応しない。
『どうしたの?』
「今の衝撃で、どこかの電気回線が切れたんだ」
『じゃあ、エレベーターは動かないの?』
「こうなったら、非常階段で降りるしかないな」
エレベーター脇にある非常口の扉を開けると、非常灯が点く。
階段を滑るように降りていくが、地下二階へ来たところで非常灯が消えてしまった。
「王宮全体の回線が切れたか」足を止め「まいったな」と呟いたとき、仄かに周りが明るくなった。
「シュール」
剣が淡い光を発している。
『長く持たないから、急いで』先ほど大量のプラズマを放出したので、体力がほとんど残っていなかった。
マーティは剣が付いているチェーンを首から外すと手に持って足元を照らし、再び階段を下りていく。
さらに降りて行くと「下のほうが明るくなってきたぞ」降りるにつれて、階段が一段ずつハッキリと見えてくる。
「地下五階だけ別回線なのか?」
『医務室の先生が切り替えてくれたんだよ』
「そうだといいが。とにかく、何が起こるかわからない。慎重に行こう」
足音を殺して地下五階へ降りるとドアを細目に開け、通路に誰もいないことを確認すると中に入り、奥へ延びる通路を走っていく。
突き当りのドアまで行くと再び細目に開け、誰もいないことを確認すると中に入る。
そこは西側に面した通路だった。左奥に待機室が見え、右奥に医務室が見える。
「ここに出るのか」
『先生は医務室十って表示されてるドアにいるよ』シュールが場所を教えるとマーティはチェーンを首に掛け、通路を走って目的のドアの前に行くと中に入った。
『手前の診察室一って表示が出てるドアだよ』
言われたドア横のインターフォンを押すと上にあるモニターにアニスが映るので「アニス!」驚くとドアが開き「マーティ!」彼女が顔をだす。
「なぜ来た? 危ないだろう」
「あ、ロイ、心配、だから」
「あなたがマーティ?」アニスの後ろに立つバーネットが「入って。彼の状態をできるかぎり詳しく教えて」
部屋に入ってロイたちのことを細かく話すと「そう、早く輸血しないと危ないわね。もう一人の男の人も、気管を損傷して呼吸困難になってる可能性があるわ」
「今、王宮内は発煙筒の煙が充満してる上に、前庭での撃ち合いが激化してるので、崩れる恐れがある」
「ではここへ運びましょう」
「どうやって? エレベーターは電気回路が切れてて動かないんだぞ」
「この奥に緊急用エレベーターがあるわ。研究所の電気回線で動くから大丈夫よ」
「しかし、どうやってロイたちをここへ運ぶんだ?」
「搬送用の電動担架があるわ。それを持っていきましょう」
バーネットは隣の部屋へいくと戸棚を開け、折り畳んである担架を取りだすと、アニスとバーネットで一台、もう一台をマーティが持って診察室の奥のドアから出る。
その先には真っ直ぐ王宮へ延びる通路があり、三人は突き当りにある緊急用エレベーターに乗って一階へ向かった。




