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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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34-1 緊急事態へ

 

 王宮沿いに裏庭を西へ走っていくと「待て」ロイを止める。「このままでは、どこへ逃げても追ってくる」振り返ると、赤く染まるロイの右脚から流れ落ちる血が、点々と地面に道標(みちしるべ)を作っていた。


「僕の血が、行く方向を教えてるのか」


 マーティは自分のシャツの(そで)(やぶ)るとロイの脚をしばり直し「出血が多い。この状態で走り続けると倒れるぞ」


「逃げなければ捕まってしまう。何とか持たせるよ」


 数分後。

「ネズミは見付かったか?」月明りに照らされた護衛隊、指揮官の顔が暗闇に浮かぶ。


「血の(あと)がここで途切れてます」(かが)んで地面を見ていた隊員が報告すると「ここで止血したか」しゃがんで血を(さわ)り「()れて間もないな。ということは、そう遠くへは行ってないはず。この近辺を徹底的に調べろ!」


「ハッ!」隊員が四方に散らばる。



 一方ロイとマーティは、王宮の裏手にある使用人が出入りするドアから、もぬけの(から)となった王宮内へ入っていた。

 まだモウモウと発煙筒の煙が立ち込めている。


「ロイ、頑張れ」グッタリしてきた彼に肩を貸しながら、イノンドたち宇宙管理局の部隊が来るまで、王宮内に(かく)れていようと通路を歩いていた。


 しかし、脚に力が入らなくなってきたロイが途中で(ひざ)をつく。


「大丈夫か?」座り込むロイの額から脂汗が出ているのを見て「マズいな。熱が出てきてる。 参ったな。これ以上動かせないぞ」


『マーティ、どうしよう』(あせ)りだすシュール。


 剣はペンダントヘッドの大きさに戻って、ロイの首からぶら下がっている。


一旦(いったん)この部屋へ入ろう」近くにあるドアを開け、ロイを(かつ)いで中に入る。


『ここ、誰かの部屋みたいだよ』

「使用人の部屋のようだな」


 カーテンが引いてあるので、真っ暗ではないがかなり暗い。


 その部屋を歩いていると『マーティ止まって。誰かいる』

「誰なんだ?」


『わからない。脚しか見えないけど、動かないよ。死んでるのかな』

「どこにいる?」

『ベッド脇の床に倒れてる』


 マーティはロイをソファに寝かせ、ライターを点けてベッドのほうへ歩いていくと、奥の壁とベッドの間に中年の男が一人、うつ伏せになって倒れているのを見付け、(そば)へ行って様子を見る。


『死んでるの?』

「いや。生きてるが脈が弱い。たぶん、外で煙を吸い、この部屋に逃げ込んできたんだろう」


『誰なの?』

「わからない」ソファからクッションを持ってくると、仰向(あおむ)けにして枕代わりに置く。


 男の服装を確認すると『ずいぶん古ぼけた服を着てるね。こんな人が王宮で働いてるとは思えないけど』

「庭師かもしれないな」


『じゃあ、ここはこの人の部屋なの?』

「いや、この部屋の住人は女性だ。女性用の香水の香りがする」

『そういえば』


「とにかく、ロイもこの男も動かせない。何とかしてイノンドに連絡を取らないと、二人とも手遅れになるぞ」マーティはどうするか考え、部屋の中を見回すと、大きなクローゼットの扉を開ける。


『何するの?』

「この位の広さなら、二人入れる」


『ロイをこの中に入れるの!』

「念のためだ。もし部屋に()み込まれたら、なす(すべ)がない」


『王宮の中には入ってこないよ』

「確率がゼロでないかぎり、最悪の事態を想定して動くのが鉄則だ」


 掛かっている服を真ん中に寄せて端にクッションを敷き詰めると、その上にロイを座らせ「聞こえるか?」声を掛けると、かすかに(うなず)くので「イノンドたちを連れてくるから、ここにいてくれ」剣が付いているチェーンを外すと自分の首に掛け、ベッド横の床で寝ている男を連れてきてロイと反対の端に毛布を()くと座らせ、扉を閉める。


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