29 事前確認
午前七時十分前になると、昨日と同じ交代要員がきて引き継ぎをおこなった。
「異常ありませんでした」報告するロイが牢のマスターキーを渡し「では、失礼します」管理室から出ると第一研究室横の警備室へいき、業務日報を入力すると待機室へ急いだ。
いつものようにマーティは牢の警備室へ向かい、ロイは牢の中へ戻る。
少しするとイノンドが牢へ戻ってきて「お疲れ様でした」と声を掛けてきた。
「疲れました」笑顔で答えると「リストを入手できたようですね?」
「はい。いろいろありましたが、何とか切り抜けられました」着替えながら話していると、ドアの開く音がした。
「イノンド、服を隠して」慌てて警備服をベッドの中へ隠すと、アニスとバーネットがやってきた。
「おはようございます」いつものようにバーネットが声を掛けてくる。「体調はいかがですか?」
「なんとか大丈夫です」ロイが落ち着いて答えると、イノンドが「今日は、お二人のほうが目が充血してますよ。なにかあったんですか?」
「いけない! 目薬をさしてくるの忘れたわ」アニスと二人で顔を見合わせる。
「どうしたんですか?」
「実は、ある資料が見付からなくて、部屋中を探す羽目になってしまたんです。お陰で、片付けが終わったのが明け方近くだったので」
「でも、見付かって、よかった」
「本当。今夜使うものだから焦ったわ」
そう聞いて、探していた資料がどういうものか気付くと「では、資料は全部揃ったんですね?」と聞くロイに「ええ。間に合ってよかったわ」笑顔を返すバーネット。
「戻られたら、少し仮眠を取ったほうがいいですよ」イノンドが声を掛けると「そうね、そうするわ」
彼女たちは笑顔を見せると次の牢へ向かい、ロイとイノンドは、朝食を食べるとベッドに潜り込む。
ティータイムの時間になると、アニスたちが起こしにきた。
今日は、ケーキのほかにホットドックが付いている。
「オマケ付きか」ロイがトレーを受け取ると「睡眠不足は解消されましたか?」バーネットに聞かれ「なんとか」と答え、そっちは? と聞くように首を傾けると、彼女はニッコリ笑って次の牢へ向かった。
アニスたちを見送ると、イノンドがカップに紅茶を注ぐ。
「いい香りですね」
「専門家が入れてるようですが、会ってみたいですね」
「同感です。コーヒーの淹れ方も完璧ですよ」向かいの椅子に座ると「ところでイノンド。王女から話を聞けましたか?」
「ええ。一応、聞いてきました」歯切れの悪い返事をするので「何かあったんですか?」と聞くと、苦笑して「ちょっと妙な具合になりまして」




