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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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26 作戦その八 データ収集 再チャレンジ

 

 その日は午後六時に夕飯を食べ、四十分にマーティが来ると、今夜のことについて話し合った。


「私は何をしたらいいですか?」自分の役割が終わったのでイノンドが聞いてくる。


「王女の様子を見にいってもらえませんか? もし話ができるようなら、今回のことを詳しく聞いてください」


「わかりました」

「僕たちはもう一度資料室へ行って、リストを入手してきます」


 待機室から出るとイノンドに医務室の場所を教え、ロイとマーティアは研究室へ向かった。



 第一研究室でいつものチェックを済ませると、昨日と同じく、人体実験室の監視をするよう言い渡され、実験室に入るとマーティは管理室へ行き、ロイは例の男の牢へ行ってドアを叩く。


「やあ、今夜も同じ仕事でよかったな」

「これから行ってくるから、戻ってくるまで頼むよ」

「ああ、大丈夫だ」


 ロイが管理室へ戻ると、マーティが換気口の(ふた)を開けて待っていた。

『マーティ、パスワードわかった?』シュールが聞くと「今度は大丈夫だ」余裕のある顔で答える。



 昨日と同じ経路(けいろ)辿(たど)って白衣に着替えると、第一資料室へ入る。


「ここまでは順調だな」


 ところが、奥の資料室に入ると、三人の調査員がコンピュータのキーを叩いていた。


「何か追加でも出たのか?」彼らの一人がロイたちに気付き、振り返るので「ああ、急に追加が出た」マーティが持っているファイルを見せると「そっか。お互い大変だな」向き直ってキーを叩きだす。


『ヒエエエエッ、ビックリした』動悸(どうき)がするシュール。


 ロイとマーティは反対側の空いている椅子に並んで座り、コンピュータの電源を入れる。


「マズいぞ。どうする?」前を向いたままマーティに声を掛けると「今夜しかないんだ。なんとか手を考えるしかないだろう」後ろの調査員たちを見る。

『ねえ、どの位かかるか聞いてみたら?』シュールに言われ、ロイが調査員たちに聞こえるように「こんな日に限って突然残業が入るなんて、ついてないな」隣のマーティに声を掛けると「ああ、お陰で今夜の予定がパアだ」


「なんだ、君たちも突発だったのか」聞きとめた調査員の一人が話に入ってくる。


「皆さんも同じなんですか?」ロイが話を振ると「そうなんだよ。急に取引が決まったらしくて、クライアントの身元調査が回ってきたんだ」


「では、今夜は徹夜ですか?」


「そうなるだろうね。参ったな。今日は娘の誕生日で、早く帰るって約束してたのに。さっき電話したら、帰ってくるまでケーキを食べないで待ってると言われてね」苦笑して肩を落とすと向き直る。


「俺も予定が入ってたのに、ドタキャン続きで誘われなくなりそうだよ」


「参るよな。もう少し何とかしてくれないと。俺なんか二週間も家に帰ってないんだぜ」次々不満を()らす。


「取引はいつなんですか?」

「なんでも明晩らしいよ」

「確かに急ですね」

『こりゃ参ったわ』ガッカリするシュール。


「何かいい手はないか?」ロイに聞くと「今考えてるよ」キーを叩きながら案を模索する。


『データを移すだけでしょう? こっそりやればバレないんじゃない?』シュールの提案に「途中でモニターを(のぞ)かれたらどうする」とマーティに言われ『バレます』自分で却下(きゃっか)する。


 その後、対策案を模索(もさく)する。


『睡眠薬入りの飲み物を飲ませる』

「持ってない」


『お酒を飲ませて、酔わせた(すき)に』

「仕事中に酒は飲まない」


(なぐ)って気絶させる』

「こんなときに冗談言うな」


 その時、後ろから話し声が聞こえてきた。


「なあ、夜食の時間を調節して、家に帰ってきたらどうだ?」

「バレたらただじゃ済まないぞ」


「俺たちが口裏を合わせれば大丈夫だよ」

「しかしなあ」

「娘さん、ケーキ食べないで待ってると言ってるんだろう? 帰ってやれよ」


「帰ってあげたほうがいいですよ」ロイが話に入る。「こうしましょう。今、午後九時前です。午前二時まで僕たちがいますから、その間に、それぞれの予定をこなしてきてください」


「それじゃ君たちに悪い」

「構いませんよ。困ったときは助け合うのが仲間じゃないですか」


「しかし、それでは調査が間に合わない」

「僕たちが途中まで進めておきますよ」


「それはダメだ。君たちだって仕事を持ってるのに、俺たちの分を押し付けるわけにいかない」

「今度、僕たちが困ったとき、助けてください」

「しかし……」


「さあ、早く行ってください。時間がもったいないですよ」

 三人は顔を見合うと「すまない。次は俺たちが代わるから」


「時間までには、必ず戻ってきてくださいね」

「もちろんだ!」三人の調査員はロイに資料を渡すと、何度もお礼を言って出ていく。


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