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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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25 バレた弱み

 

 二人は急いで待機室へ戻り、ロイはそのまま牢へ行くとマーティは警備室へ行ってイノンドと交代して、彼が牢へ戻ってくると、すぐにモーニングコールが鳴った。


「今日はずいぶんと戻ってくるのが遅かったじゃないですか。心配しましたよ」イノンドが着替えながら聞いてくるので「交代がギリギリだったんですよ。そっちはどうですか?」


「完了しました。ここへ連れてこられた人達のリストは、このディスクに移してあります」脱いだ警備服のポケットからUSBスティックを見せる。


「そうですか。すみません、僕たちは失敗しました」

「何かあったんですか?」


 他の牢に聞こえないように資料室で立ち往生した話をすると「アハハハハハッ! そんな事があったんですか!」


「笑いごとじゃないですよ!」


「ああ、すみません。しかし、あのマーティがケーキのことでそんなに怒りだすとは、想像できませんよ。そうですか、お二人とも甘党だったんですね。だからエルが、二人にお灸を()えるには、おやつ抜きが一番効くんだと言ってたんですね」


「エルがそんなこと言ったんですか!」

「この前、アニスが焼いたフルーツケーキを一緒にご馳走になったとき、そう言ってましたよ」


「エルの奴、余計なことしゃべりやがって」

『イノンドにも弱みを(にぎ)られちゃったね』楽しそうなシュール。

「私は、おやつ抜きだなんて言いませんよ」クスクス笑うイノンド。


「とにかく、今夜もう一度行ってきます」

「何があるかわかりませんから、十分気を付けてください」


 そこへ、アニスとバーネットがやってきた。


「おはようございます」バーネットが声を掛けてくるので「ああ、おはようございます」着替え終わったロイが答えると「あら、どうしたんですか? 目が充血してますよ」


「いろいろと考えごとをしてたら眠れなくなってしまって」


『大分頭を使ったもんね』シュールの言葉を聞いて何かあったと気付くアニスが「私たち、できること、やる。言って」心配そうな顔をするので「大丈夫だよ。ありがとう」


『アニスのほうはどう?』シュールが聞くと微笑むので『順調なんだね、よかった。ところで、王女様はどうしてる?』また微笑むので『順調に回復してるんだね』


「おや、二人とも手にたくさんの引っ()きキズを作って、どうされたんですか?」イノンドが二人の指を見ると「ちょっと。シリアンと格闘したものですから」バーネットがアニスと一緒に苦笑して「元のシリアンに戻ったものですから、捕まえるのが大変でした」と言うので「ああ、そういう事ですか。それは大変でしたね」


 バーネットたちは彼らに朝食のトレーを渡すと、次の牢へ向かった。


「さあ、食べたら少し寝ましょうか」イノンドがフォークを取ると「そうですね」ロールパンを食べはじめるロイ。


 食後、コーヒーを飲んだにも(かかわ)らず、ベッドに入るとすぐに寝息を立てはじめた。



 午後三時になると、アニスが起こしにきた。


「ティータイム」

「ああ、もうそんな時間なのか」ロイはベッドから出ると、備え付けの洗面所で顔を洗う。


「軽食、持ってきた」牢の隅からパンケーキが乗ったトレーを差しだすので「ありがとう。助かるよ」受け取るとテーブルに置く。


『ふわああああ、なあにい? もう朝あ?』寝ぼけているシュール。


「もう三時を回ってるんですか? かなり寝てしまいましたね」寝起き声のイノンドが枕もとの腕時計を見るので『三時? そっか。夕べは徹夜したんだ』


「差し入れをもらいましたよ。温かいうちに食べましょう」ロイがコーヒーカップを持つ。


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