23 資料室
マーティはポケットからパスカードを取り出すとキーボックスへ差し込み、再びドアを開けると、先に入ったロイに気付いた警備員が手を止め「どうしたんですか?」と聞いてくるので「まだ仕事が残ってたのを思い出したんだ」手に持つファイルを見せる。
三人の警備員たちは、どこから持ち出したのか、掃除機でガラスの細かい破片を吸い取っている。
「おい。さっきの事、忘れるなよ」打ち合わせどおり、マーティが絡んできた。
「まったく、まだ言ってるのか? しつこいぞ」
「しつこいとは何だ、しつこいとは」
「何回も同じことを聞くからだよ」
「当たり前だろう」
「煩いな」
「何だと!」
「二人とも止めてください」先ほど仲裁に入った無謀な警備員がまた仲裁に入ってくる。
「悪いけど、資料室のドアを開けてくれないか? こいつを黙らせるから」
「こいつとは何だ! こいつとは!」
「さっきケリが付いたろう。蒸し返すなよ」
またケンカを始めそうな雰囲気になってきたので、とばっちりを食う前に追い出そうと、仲裁に入ってきた警備員がポケットから掌大のリモコンを取りだすと、スイッチを押す。
すると、左奥の壁の一角が音もなく開いた。
『そういう仕掛けになってるのか』なるほどと頷くシュール。
「開けましたよ」
「ああ、ありがとう」ロイが歩きだすと「約束、忘れるなよ」マーティが背中を突き飛ばすので掃除機に足が引っ掛かり、近くにいた警備員にぶつかる。
「おっと、大丈夫ですか?」
「ワザと押しただろう」マーティを睨むと「コケたロイが悪い」
「何だと!」掴みかかろうとすると「まあまあ、押さえて、押さえて」ロイがぶつかった警備員が止めに入る。
「後ろから突き飛ばすなんて、卑怯な奴だ」
「まだやる気か?」今度はマーティが突っかかって行こうとする。
警備員たちはいくら言っても無駄だと悟り、リモコンで開けた用具入れに掃除機をしまうと、パスカードをキーボックスに差し込み「とにかく、揉めごとはご法度ですからね」と言い残し、リモコンのスイッチを押してドアを開けると、パスカードを抜き取って出ていった。
「ああいう仕組みになってたのか」ドアの絡繰りがわかってロイがホッとすると「疲れた」肩を落とし、大きく息を吐くマーティ。
『一時はどうなるかと思ったけど、何とか上手くいったね』一番疲れているシュール。
「さあ、リストを探すぞ」ロイが資料室へ入る。




