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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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22-2 アクシデント発生!

 

 その時、通報を聞きつけた三人の警備員が入ってきたが、怒鳴り合いのケンカをしている二人を見て、しばらくの間、入り口のところで立ち尽くしていた。


 ロイたちは、彼らに気付かないでケンカを続けている。


「もう少し誠意のある謝り方ができないのか!」

「何度も謝ってるだろう!」


 警備員たちは、どうして二人がケンカをしているのかわからず、やり取りに耳を(かたむ)ける。


「誰にも聞かずに食う奴があるか!」

「だから、余ったものだと勘違いしたと言ってるだろう!」


「勘違いで済むか! あのケーキは戻らないんだぞ!」

「当たり前だろう! 僕の胃が跡形もなく消化したよ!」


「食い意地が張りすぎだ!」

「悪かったな!」


「どうしてくれるんだ! あのケーキは俺だけ食ってないんだぞ!」

「どうにもできないよ!」


 ここまで来たとき、ケンカの原因がわかった警備員の一人が、無謀(むぼう)にも仲裁(ちゅうさい)に入ってきた。


「まあまあ、大の大人がケーキのことなんかで、ケンカしないでください」

「何だと!」


 ものすごい剣幕(けんまく)で怒鳴られ、(ひる)んだ警備員は後づさるが、遠慮がちに「だから、たかがケーキのことで、ケンカなんか、しないでくださいと、言ったんです」


「たかがだと!」今度は警備員に食ってかかる。

「彼の言うとおりだぞ。大人げない」


「何言ってんだ! 元はといえば、勝手に食ったロイがいけないんだろう!」だんだんとヒートアップしていく。


「とにかく落ち着いてください。そんなにケーキが食べたいのなら、また作ってもらえばいいじゃないですか」


「簡単に言うな!」


「とりあえず危険なので、飛び散ったガラスの破片を片付けますから、続きは部屋の外でやってください」


「そんなことあとでいい!」


「面倒なことやらせて悪いな。おい、邪魔だから出るぞ」ロイが部屋から出ると「まだ話は終わってないぞ!」マーティが追い掛ける。



 通路に出てドアが閉まると、監視カメラの死角になる場所へ行き「シッ、落ち着け」

「何が落ち着けだ!」


「僕が食べたというのはウソだよ」

「ウソ吐くな!」


「本当だって。あのケーキは、怖い夢を見て大泣きしてた女の子を落ち着かせるために、アニスが持ってって食べさせたんだ」


「そんなこと聞いてないぞ」


「あとで女の子がお礼を言いに来ただろう。ケーキおいしかったって。あれで、なんでマーティの分がなかったのか、わかったと思って説明しなかったんだ」


「そういえば、なんでお礼を言ってるのかわからなかった」

「だろうな。ものすごい剣幕(けんまく)で怒鳴られたとき、理解してなかったんだとわかったよ」


『怒ったマーティ見たの、初めて』ケンカが収まってホッとするシュール。

「マーティを本気で怒らせたらどうなるか、身に染みてわかったよ」


『できるだけ怒らないようにしてね』

「でも、マーティが本気で怒ったから、警備員の目を誤魔化せたんだ。感謝するよ」


『そうだね。お疲れ様でした』

「フン!」うまく乗せられたことに気付き、思いっきりしかめっ面をする。

「まあまあ、そうヘソを曲げるなって。とにかく時間がないんだ。作業に戻ろう」


 二人は通路を一周して元の場所へ戻ってくると「どうやら、ここが目的の資料室なのは間違いないな」ドア横に付いている「資料室」と表示されている電子プレートを見る。


『でも、中は空っぽだよ』

「隠し部屋があるんだよ」


『隠し部屋?』

「そう。どこかに資料室へ繋がるドアがあるんだ」


「しかし、部屋の中を調べたとき、変わったところはなかったぞ」

「さっきの警備員に開けてもらおう。絶対開け方を知ってるはずだ」


「どうやって?」

「僕に案がある」


『部屋から出るときはどうするの? どうやってドアを開けるかわからないんだよ』

「大丈夫。ちゃんと考えがある」


「俺は何をしたらいい?」

「中に入ったら、不機嫌な顔をしてネチネチ言いだしてくれ」


「ハァ?」

「とにかく、言われたとおりにしてくれればいいから」


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