22-2 アクシデント発生!
その時、通報を聞きつけた三人の警備員が入ってきたが、怒鳴り合いのケンカをしている二人を見て、しばらくの間、入り口のところで立ち尽くしていた。
ロイたちは、彼らに気付かないでケンカを続けている。
「もう少し誠意のある謝り方ができないのか!」
「何度も謝ってるだろう!」
警備員たちは、どうして二人がケンカをしているのかわからず、やり取りに耳を傾ける。
「誰にも聞かずに食う奴があるか!」
「だから、余ったものだと勘違いしたと言ってるだろう!」
「勘違いで済むか! あのケーキは戻らないんだぞ!」
「当たり前だろう! 僕の胃が跡形もなく消化したよ!」
「食い意地が張りすぎだ!」
「悪かったな!」
「どうしてくれるんだ! あのケーキは俺だけ食ってないんだぞ!」
「どうにもできないよ!」
ここまで来たとき、ケンカの原因がわかった警備員の一人が、無謀にも仲裁に入ってきた。
「まあまあ、大の大人がケーキのことなんかで、ケンカしないでください」
「何だと!」
ものすごい剣幕で怒鳴られ、怯んだ警備員は後づさるが、遠慮がちに「だから、たかがケーキのことで、ケンカなんか、しないでくださいと、言ったんです」
「たかがだと!」今度は警備員に食ってかかる。
「彼の言うとおりだぞ。大人げない」
「何言ってんだ! 元はといえば、勝手に食ったロイがいけないんだろう!」だんだんとヒートアップしていく。
「とにかく落ち着いてください。そんなにケーキが食べたいのなら、また作ってもらえばいいじゃないですか」
「簡単に言うな!」
「とりあえず危険なので、飛び散ったガラスの破片を片付けますから、続きは部屋の外でやってください」
「そんなことあとでいい!」
「面倒なことやらせて悪いな。おい、邪魔だから出るぞ」ロイが部屋から出ると「まだ話は終わってないぞ!」マーティが追い掛ける。
通路に出てドアが閉まると、監視カメラの死角になる場所へ行き「シッ、落ち着け」
「何が落ち着けだ!」
「僕が食べたというのはウソだよ」
「ウソ吐くな!」
「本当だって。あのケーキは、怖い夢を見て大泣きしてた女の子を落ち着かせるために、アニスが持ってって食べさせたんだ」
「そんなこと聞いてないぞ」
「あとで女の子がお礼を言いに来ただろう。ケーキおいしかったって。あれで、なんでマーティの分がなかったのか、わかったと思って説明しなかったんだ」
「そういえば、なんでお礼を言ってるのかわからなかった」
「だろうな。ものすごい剣幕で怒鳴られたとき、理解してなかったんだとわかったよ」
『怒ったマーティ見たの、初めて』ケンカが収まってホッとするシュール。
「マーティを本気で怒らせたらどうなるか、身に染みてわかったよ」
『できるだけ怒らないようにしてね』
「でも、マーティが本気で怒ったから、警備員の目を誤魔化せたんだ。感謝するよ」
『そうだね。お疲れ様でした』
「フン!」うまく乗せられたことに気付き、思いっきりしかめっ面をする。
「まあまあ、そうヘソを曲げるなって。とにかく時間がないんだ。作業に戻ろう」
二人は通路を一周して元の場所へ戻ってくると「どうやら、ここが目的の資料室なのは間違いないな」ドア横に付いている「資料室」と表示されている電子プレートを見る。
『でも、中は空っぽだよ』
「隠し部屋があるんだよ」
『隠し部屋?』
「そう。どこかに資料室へ繋がるドアがあるんだ」
「しかし、部屋の中を調べたとき、変わったところはなかったぞ」
「さっきの警備員に開けてもらおう。絶対開け方を知ってるはずだ」
「どうやって?」
「僕に案がある」
『部屋から出るときはどうするの? どうやってドアを開けるかわからないんだよ』
「大丈夫。ちゃんと考えがある」
「俺は何をしたらいい?」
「中に入ったら、不機嫌な顔をしてネチネチ言いだしてくれ」
「ハァ?」
「とにかく、言われたとおりにしてくれればいいから」




