18 作戦その五 王女救出
午後八時。
医務室にシリアンが来たので「王女、この中、隠れて」ワゴンに掛かっているシーツをめくり、中へ入ると「私が、いい、言うまで、静かに、ね」シーツを戻すと「さあ、行くわよ」バーネットが医務室から出ると、あとからワゴンを押すアニスが出る。
二人は西側の通路へ向かい、警備兵がいる通路へ曲がると彼らの前までいく。
「ご苦労様です」いつものようにバーネットが声を掛けると「今日はずいぶんと大きなワゴンですね。何が入ってるんですか?」彼らの一人が興味深そうにワゴンを見るので「着替えとシーツやカバー類よ。取り替える日なの」
「そうですか。女性は何かと大変ですね」
「そうよ。さあ、開けてちょうだい」
彼らの一人がポケットからキーを取り出してドアを開けると中に入り、電気が点いてドアが閉まると「さあ、行きましょう」奥へ続く通路を進む。
突き当りのドアを開けると、中は小さな明かりが点いているだけなので薄暗く、バーネットが電気を点けると、部屋の中央に置かれているベッドに女性が寝ているのが見えた。
ベッド脇に行き、アニスがワゴンに掛かっているシーツをどけるとシリアンが出てくるので、バーネットはワゴンに乗っている細長いビンと布を取り、液体を染みこませるとアニスに合図を送る。
「さあ、体、戻って」声を掛けるとシリアンはベッドの上にヒョイと乗り、寝ている女性の胸の上でうずくまる。
少しすると王女が目を覚まし、同時にシリアンが顔を上げるので、アニスがシリアンを押さえ込むと「ニャアアアア!」ものすごい声をあげて暴れだす。
「早く!」アニスが声を掛けると「大人しくしなさい!」バーネットが睡眠薬を嗅がせようと布を口へ持っていくが「イタッ!」腕を引っかかれ、手を離したすきにアニスの手を振りきってベッドから降りると、部屋の中を走りだす。
「アニス! 捕まえて!」
「待て!」
大して大きくない部屋だが、すばしっこい猫を捕まえるのは至難の業である。
二人はギクシャク動く王女をホッといて、シリアン捕獲に集中した。
何分経っただろう。シリアンの動きが鈍くなってきたので、部屋の隅に追い込むことができた。
「さあ、観念しなさい」バーネットが睨み付けると、負けるものかとシリアンも睨み返す。
肩で息をするアニスとバーネット。シリアンも、運動不足のせいか息遣いが荒い。
「アニス、時間差攻撃で行くわよ」
「はい」
「せーの」バーネットが先に捕まえにいくと、シリアンはスルリと手を交わして彼女の脚の間を抜け、逃げようとするが、その先にはアニスが待ち構えていた。
「ニャア!」
怯んだ隙に取り押さえる。
「ヤッタ!」
「ニャアアア」疲れ果てたシリアンは、観念したのか抵抗しなかった。
「まったく、人騒がせなんだから」グッタリしているシリアンの頭を撫でるバーネット。
その光景を、ベッドに腰掛けている王女は、ボオッとした顔をして見ていた。




