15-2 さらなる問題発覚
「私の叔父は大学で薬学の研究をしてて、私は同じ大学で医学博士の勉強をしながら、叔父の手伝いをしてたの。ある日、叔父の元に一通のメールがきて、巨大プロジェクトを始めるので有志を募ってる、と書かれてたの」
「巨大プロジェクトですか」
「叔父の友人で生物学の研究をしてる人にも同じメールがきてて、内容は生体に関するもので、ぜひ参加してほしいというものだったわ」
「送り主について、詳しく調べたんですか?」
「もちろん。私たちが所属してる医師団体の幹部の人が送り主の会社を知ってて、ここはしっかりしてるところだから、信用していいと言われたの。それに、研究所がある星まで専用の宇宙船を用意するし、プロジェクトが終わるまで、快適な居住空間を提供するともあって。それに、報酬もいい額だったから」
「それで、あなたたちは参加することにした」
「同行者は各自一名までと書いてあったので、叔父は私を連れていくことにしたの」
「それで?」
「集合場所となってるスペースエアポートまで行って、そこから向こうが用意した宇宙船に乗って、研究所がある星へ向かったわ」
「その船には何名くらいの人が乗ってたんですか?」
「私たちの星からは八名乗ったけど、その時すでに百名くらいの人が乗ってたわ」
「広範囲に渡って人材を集めたのか。で、それからどうなったんですか?」
「出発してから二日目だったわ。突然、船が故障して火災が起きたの」
「航行中に火事が起きたんですか?」
「ええ。私たちは船のクルーに誘導されて大きな部屋へ入ったんだけど、煙が立ち込めてきて、もうダメだと思ったわ」
「船外へ脱出しなかったんですか?」
「いつの間にか気を失ってて、気付いたらここへ運ばれてたの」
「そうなんですか」
「最初は生きてられたことを喜んだんだけど」
「どうしたんですか?」
「火事は、カムフラージュだったのよ」
「カムフラージュ?」
「あの事故で私たちは死んだことになってるの。ここで行うことを世間から隠すためにね。私たちが死んだことになれば、誰も行方を捜したりしないでしょう?」
「そういう手を使ったんですか」
『うまい手だなあ』聞き耳を立てているシュール。
「しかも、メールに書いてあった研究所の場所はデタラメだったとあとから聞かされたわ。だから、私たちはここがどこなのか知らないの。あの日から一歩も外へ出てないから」
『エーッ! 三年前からこの中に閉じ込められてるってこと?』ビックリするシュール。
「でも、そうなったら、メールを送った会社が多額の賠償金を支払わないといけないじゃないですか。そこまでのリスクを負うようなことをするかな?」
「その会社は、事故が起きたときに破産宣告して、会社を整理したときにできたお金を損害賠償として分けたのよ」
「もしかして、その会社、いや、あなたたちに信用していいと言った医師団体の幹部も、一枚かんでたんじゃないですか?」
「そのとおりよ!」怒りを露わにする。
「この星が絡んでるとなれば多少のお金は工面できるし、多方面に手が回せる」
『権力って、悪用しようと思えば、いくらでも悪どいことができるんだね』お金の怖さを再認識するシュール。
「ここへ連れてこられてから何名かが脱出を試みたけど、誰も成功しなかったわ。同じことをしたらこうなると、見せしめに私たちの前で殺されたの」
「脅迫してここに閉じ込めたんですか?」
「そうよ」




