12 作戦その四 調査
その日の午後十時過ぎ。
ロイたちが収容されている牢の前に、一人の警備兵がやってきた。
体を屈めると小声で「ロイ」と呼ぶので「マーティか?」
「そうだ」
返事を聞いてベッドから出るとマーティが牢の鍵を開け、中に入ってきて「こっちの服に着替えろ」持ってきた大きな紙袋を渡す。
中には二着の警備服が入っていた。
その後マーティは持ってきた大きな風船を膨らませ、ベッドに入れて毛布をかぶせると、着替え終わったロイたちと部屋の奥へいって向かい合わせに座る。
「まずはIDカードだ」ポケットから取り出すと二人に渡し「ところで、ずいぶんとややこしいことになったな」
「問題がさらに大きくなった。で、どうだった?」
「ここには大規模な研究室がある」
「やっぱり。そこで殺人マリオネットに変えるための薬を作ってるんだ。で?」
「宇宙管理局、薬物課の課員が二人、研究員として潜り込んだ」
「では、そっちの情報は取れるな」
「ああ、打ち合わせどおりだ」
「ところで、アニスはどうしてる?」
「医務室の先生の助手についたと、連絡が来てる」
「医務室の先生か。いいポジションにつけたな。これで王女の本体が捜しやすくなる。絶対、その先生は王女のことを知ってるぞ」
「アニスとは定期的に連絡を取るから、何かわかったら知らせる」
「くれぐれも、無理しないように言っといてくれ」
三人は立ち上がると牢から出た。
「イノンド。牢の警備室は通路の突き当りにある」マーティが奥を指さす。
警備室は、各待機室に一つずつあった。
「交代時間は午前七時。今、一緒に潜り込んだ捜索課の課員たちがいるから合流してくれ。交代時間までには戻る」
「わかりました。くれぐれも気を付けてください」牢の警備室へ向かって通路を奥へと歩いていく。
ロイたちは通路の反対のドアから出ると、控室を横切って待機室から出た。
通路に出て「研究室はどこにあるんだ?」マーティに聞くと「こっちだ」運搬用のエレベーターがあるほうへ歩いていく。
そのエレベーターまで来ると「僕たちはこれに乗ってこの階へ来たけど、マーティはどうやって王宮からこの建物へ来たんだ?」
「この研究所は王宮の裏庭の北の端にあるが、地下通路で繋がってるんだ」
「なるほど、地下通路か」
「目的の研究室はこのエレベーターから左半分全部だ。しかし、許可がないと中に入れない」
「潜り込む方法を見付けないといけないな」
二人はエレベーターを通り越すと、真っ白で無機質に感じる壁が続く通路をさらに進み、右へ曲がったとき、警備員がいくつもあるドアの一つから出てきた。
するとロイがその警備員に駆け寄り「研究室担当の方ですか?」と声を掛ける。
「ン? そうだが」
「自分たちは研究室の警備チームに配属されたので、警備担当の責任者にお会いしたいのですが」
「エッ? 増員するとは聞いてないぞ」怪訝な顔をするので、この男が責任者らしい。
「急に決まりました。ここの情報が外に漏れたので、警備をさらに厳重にするため、人員を増やすことになったそうです」作ってもらったIDカードを見せると「そうか。私がここの責任者だ。これから中を案内しよう」
「お願いします」
責任者はポケットからカードキーを出すとドア横に付いているキーボックスに差し込み、ドアを開けると、あとから入るロイに「スパイになれるぞ」マーティが感心する。
「探偵の次はスパイか?」
「今の技、どこで覚えたんだ?」
「先週見たスパイ映画」




