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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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12 作戦その四 調査

 

 その日の午後十時過ぎ。

 ロイたちが収容されている牢の前に、一人の警備兵がやってきた。


 体を(かが)めると小声で「ロイ」と呼ぶので「マーティか?」

「そうだ」


 返事を聞いてベッドから出るとマーティが牢の鍵を開け、中に入ってきて「こっちの服に着替えろ」持ってきた大きな紙袋を渡す。


 中には二着の警備服が入っていた。


 その後マーティは持ってきた大きな風船を(ふく)らませ、ベッドに入れて毛布をかぶせると、着替え終わったロイたちと部屋の奥へいって向かい合わせに座る。


「まずはIDカードだ」ポケットから取り出すと二人に渡し「ところで、ずいぶんとややこしいことになったな」


「問題がさらに大きくなった。で、どうだった?」

「ここには大規模な研究室がある」


「やっぱり。そこで殺人マリオネットに変えるための薬を作ってるんだ。で?」

「宇宙管理局、薬物課の課員が二人、研究員として潜り込んだ」


「では、そっちの情報は取れるな」

「ああ、打ち合わせどおりだ」


「ところで、アニスはどうしてる?」

「医務室の先生の助手についたと、連絡が来てる」


「医務室の先生か。いいポジションにつけたな。これで王女の本体が捜しやすくなる。絶対、その先生は王女のことを知ってるぞ」


「アニスとは定期的に連絡を取るから、何かわかったら知らせる」

「くれぐれも、無理しないように言っといてくれ」


 三人は立ち上がると牢から出た。



「イノンド。牢の警備室は通路の突き当りにある」マーティが奥を指さす。


 警備室は、各待機室に一つずつあった。


「交代時間は午前七時。今、一緒に潜り込んだ捜索課の課員たちがいるから合流してくれ。交代時間までには戻る」


「わかりました。くれぐれも気を付けてください」牢の警備室へ向かって通路を奥へと歩いていく。


 ロイたちは通路の反対のドアから出ると、控室を横切って待機室から出た。



 通路に出て「研究室はどこにあるんだ?」マーティに聞くと「こっちだ」運搬用のエレベーターがあるほうへ歩いていく。


 そのエレベーターまで来ると「僕たちはこれに乗ってこの階へ来たけど、マーティはどうやって王宮からこの建物へ来たんだ?」


「この研究所は王宮の裏庭の北の端にあるが、地下通路で繋がってるんだ」

「なるほど、地下通路か」


「目的の研究室はこのエレベーターから左半分全部だ。しかし、許可がないと中に入れない」

「潜り込む方法を見付けないといけないな」


 二人はエレベーターを通り越すと、真っ白で無機質に感じる壁が続く通路をさらに進み、右へ曲がったとき、警備員がいくつもあるドアの一つから出てきた。


 するとロイがその警備員に駆け寄り「研究室担当の方ですか?」と声を掛ける。

「ン? そうだが」


「自分たちは研究室の警備チームに配属されたので、警備担当の責任者にお会いしたいのですが」

「エッ? 増員するとは聞いてないぞ」怪訝(けげん)な顔をするので、この男が責任者らしい。


「急に決まりました。ここの情報が外に()れたので、警備をさらに厳重(げんじゅう)にするため、人員を増やすことになったそうです」作ってもらったIDカードを見せると「そうか。私がここの責任者だ。これから中を案内しよう」


「お願いします」


 責任者はポケットからカードキーを出すとドア横に付いているキーボックスに差し込み、ドアを開けると、あとから入るロイに「スパイになれるぞ」マーティが感心する。


「探偵の次はスパイか?」

「今の技、どこで覚えたんだ?」

「先週見たスパイ映画」


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