5-3 悪者退治
「もう一つ。監査役を丸め込んでるはずだ。この点も見直しが必要だな。あと、売り捌くルート。当然、買い手もいるはず。となれば、そのリストがあるはずだ」
「それを手に入れられれば一網打尽だな」
「どこかに専用の資料室があるはずだ。そこから引き出せるだろう」
「ところで」イノンドが口を挟む。「もう一つの件ですが、これはどういうふうに今回の事件と関わってくるんですか?」別データをモニターに出す。
王女が住むラナタ星のことも調べてもらっていた。
データを読みながら「ラナタ星の王女が行方不明になってることはご存知ですよね?」
「もちろんです。私のところへも捜索願が出てますからね。今、別チームが捜索に当たってます」
ロイは少し考えると「あなたには信じられないことだと思いますが、事実だということを念頭に置いて聞いてもらえますか?」ロイの真剣な顔を見て「わかりました。どんな事ですか?」イノンドも表情を引き締める。
「生半可な説明では信じてもらえないと思うので、事実をお話しします」
「ぜひそうしてください」
「ここに座ってる猫はシリアンといって、この星の王室で飼われている猫です」テーブルの端に大人しく座っている猫を紹介すると「そして、サントリーナ王女でもあります」
「……ハ?」イノンドが困惑した声を出す。
「いきなりこんなこと言ったら驚きますよね。実は……」公園で会ったときから順を追って説明すると「本当なんですか?」返答に困る気持ちが伝わってくる。
「僕たちも最初は信じられませんでしたが、現実に起きてることと王女の話が一致してるところから見て、信じざるを得ません」
「それはそうですが、あなたがサントリーナ王女ですか?」シリアンを見ると「ニャン!」と鳴くので「まあ、いざとなるとどんな事でもできるんだろうとは思いますが、こういう形でとは」
『だよね。人間がこういう事できるなんて、初めて知ったもん』シュールにとっても衝撃的な出来事らしい。
「本当にサントリーナ王女なんですか? 申し訳ないのですが、信じられる証拠を示してもらえないでしょうか」と言うと、シリアンがロイを見る。
「なに?」見返すとトントンと右前脚でテーブルを叩くので「ああ、文字を示したいんだな」
「俺が持ってくる」マーティがリビングから出ていくので、後ろ姿を見送るイノンドが「何を持ってくるんですか?」と聞いてくる。
「五十音表ですよ。そこに書かれてる文字を指して会話をしてたんです」
「なるほど。いい案ですね」
しばらくしてマーティが戻ってくると五十音表をシリアンの前に置き、イノンドがサントリーナ王女の生年月日を聞くと戸惑うことなく答えるので「……そうですか。いくら捜しても見付からないわけですね」とため息を吐く。
「イノンド。協力していただけますね?」ロイが改めて聞くと「もちろんです。二つの問題がいっぺんに解決するチャンスですからね」
「では、作戦を立てましょう」
この日は夜遅くまで話し合いが続いた。




