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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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4 猫の正体

 

 艦に戻ると、エルに見付からないようにリビングへ向かった。

 猫はキョロキョロと部屋の中を見回している。


「さてと、どうしたら楽に話せるか。何か案がある?」猫を中央テーブルに乗せると、ロイが声を掛ける。


『文字が書けると一番楽なんだけどね』

「シュール、それは無理だとわかってるだろう?」


「ペン、口、くわえる?」

「それも無理だよ。力が入らないだろうから、字は書けないよ」


「いい方法を思いついた。ちょっと取ってくる」マーティが部屋から出ていく。



 しばらくして戻ってくると、テーブルの上に座っている猫の前に、一枚の大きな紙を置く。


「なるほど。これはいい案だ」


 紙には五十音が表になって書かれていた。


「ロベージたちが文字の練習に使ってるものだ」


「これで話ができるよ」猫に向かって「さて、最初の質問は君の名前だ」と言うと、猫は躊躇(ちゅうちょ)することなく、右前脚で文字を指していく。


【サントリーナ】


「次に、どうして君は人間の言葉がわかるんだ?」


 この質問の答えには、一同、度肝(どぎも)を抜かれた。


【わたくしは、この星から三つ東へ行ったラナタ星の王女です。

 三ヶ月ほど前、回遊(かいゆう)の途中でこの星の王室の従事者(じゅうじしゃ)に連れ去られ、薬を打たれて地下室に閉じ込められています。

 この猫は王室で飼われているシリアンという猫で、助けを呼ぶために乗り移りました】


『王女様だって!』ビックリ仰天(ぎょうてん)のシュール。


「地下室に閉じ込められてて、しかも、助けを呼ぶために猫に乗り移ったって? SF映画じゃあるまいし、信じられないよ」眉唾(まゆつば)な話に作為を感じるロイに「信じられないが、そう言ってここにいるんだぞ」テーブルの上に座っている猫を指すマーティ。


「それはそうだけど、いくらなんでも」

「もしこの話が事実ならば、大変なことだぞ」

「そうだよな」考えを切り替えると「どうして僕たちを(さが)してたんだ?」質問を続ける。


【わたくしに気付いていただける方を捜していました】


「なるほど」納得する四人。

「たまたまアニスが気付いたのか」


「ロイ。彼女、助ける。話、本当、だったら、大騒ぎ、なってる」


「そうだな。どうして閉じ込められたんだ?」と聞くと「ニャアア」と鳴いて(うつむ)くので「何か複雑な理由があるな」猫の態度に疑惑(ぎわく)(いだ)き「とにかく、この事が本当なのか確かめよう」


 ロイはテーブルの下からキーボードを出すと3D機能のボタンを押し、テーブル中央にモニターを映しだすと、この星のニュース番組のサイトへアクセスして、近辺で起きている事件欄をチェックする。


「あったぞ」


 トップページに大きな見出しがでていた。


 記事の内容は、三ヶ月前、数名の侍女と一緒に回遊(かいゆう)していた、ラタナ星のサントリーナ王女の宇宙船が何者かに乗っ取られ、王女だけがさらわれたというもの。


 その一ヶ月後の記事をチェックすると、続報が()っていた。


 行方不明になっている王女の足取りはいまだ(つか)めず、ラナタ星は大騒ぎになっていること。

 そして、ラナタ星の星王(せいおう)が多額の賞金を()けて、情報を集めている内容が載っていた。

 最近の記事では、王女はすでに遠くへ連れ去られてしまっているのではないか、と書かれている。



「君の話は本当だったのか。これで信じるよ」

「ニャ!」


「ロイ、どうする?」アニスが心配そうな顔をするので「まずは、詳しい状況を把握(はあく)するために、情報を集めないといけないな」シリアンを見ると「さて、君が言い渋ってる話を聞かせてもらうことが最初だ」


 彼女はしばらくの間考えていたが、右前脚で文字を指しはじめる。


【ウッドラフ星の王室では、内密に麻薬を製造し、売り(さば)いています】


「何だって! 王室が麻薬売買してると言うのか!」想像もしていなかったことが出てきた。

「呆れたな。それでは警察も関与してる可能性があるぞ」度肝(どぎも)を抜かれるマーティ。


「恐らく、広範囲に渡ってトップクラスの人物を抱き込んでるな」

「規模が大きすぎる。俺たちでどうこうできる問題じゃない」


「助ける、無理?」

「まさか。敵が王室なら、こっちもそれに見合った味方を付ければいいんだ」


「誰、いる?」

「いるさ。なあマーティ」

「ああ、うってつけの人物がいる。宇宙管理局、捜索課」


「イノンド!」


「王女が行方不明になってるのであれば、彼のところに捜索依頼が来てるだろうし、麻薬製造犯を逮捕できれば、一挙両得(いっきょりょうとく)手柄(てがら)だ。それに、王室について調べなければならないから、彼の力を借りれば早いよ」


「早速、エルに頼んで呼んでもらおう」携帯を出すマーティに「その前に、エルに事情を話したほうがいいよ」


「ああ、そうだな……」席を立つと作戦会議室へ向かった。


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