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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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3 言葉を理解する猫

 

(えさ)をもらってないのか?」少し心配になるマーティ。

『迷子になって、家に帰れないのかもしれないよ』シュールも少し心配。


「あとで交番に連れていくか。もしかしたら届けが出ているかもしれない」

「もしそうなら、飼い主は心配してるだろうな」


「ニャ、ニャ、ニャ」

「なんだ? 何か言ってるように見えるけど」ロイが猫を見ると「ニャン、ニャン」と鳴く。


「たまに、人間の言葉を理解してるのか? と思うようなことがあったが、話の内容を理解することはさすがにないだろう」と言うマーティに向かって「ニャーン」と鳴くので「……どう思う?」ロイに振ると「……理解する時間をくれ」


「逃げるな」

「ニャ、ニャ、ニャン」


「猫ちゃん、言葉、わかる?」アニスが話し掛けると「ニャン!」と一鳴きする。


「お家、遠い?」

「ニャン」


「近い?」

「ニャンニャ」


「どっち?」ロイを見と「君の判断に任せるよ」苦笑する。

「シュール、どっち、思う?」

『私は遠いと言ってると思う』


「私も、同じ。猫ちゃん、なぜ、ここいる?」

「ニャ、ニャンニャンニャ。ニャンニャニャ。ニャニャン。ニャニャン」


「……シュール、わかる?」

『全然わかんない』

「ニャー」


 アニスも猫も困ったような顔をして黙り込むので「人間の言葉がわかるというなら、イエス・ノーで答えられる質問をすればいいんじゃないか?」マーティが呆れて案をだすと「そうする」アニスは気を取りなおし、イエスのときは一回、ノーのときは二回鳴くというルールを決め、再度、猫に質問することにした。


「猫ちゃん、お家、遠い?」

「ニャ」


「ご主人、一緒?」

「ニャンニャン」


「迷子、なった?」

「ニャンニャン」


「お家、帰れる?」

「……ニャン。ニャー、ニャンニャン」


「帰れない?」

「ニャン」


「迷子、違う。でも、帰れない」

「ニャン」


 ロイとマーティは、アニスの質問に答える猫が気持ち悪く思うが、興味も()いてきた。


「あの猫、アニスの質問に答えてるぞ」

「本当は猫じゃないんじゃないか?」


「猫じゃなかったら何なんだよ」

「わかるわけないだろう」


 二人がボソボソ話している間にも、アニスは猫に質問していた。


「目的、あるから、ここ、来た?」

「ニャン」


「誰か、捜してる?」

「ニャン」


「ご主人?」

「ニャンニャン」


「お友達、猫ちゃん?」

「ニャンニャン」


「捜してる、相手、ここ、いる?」

「ニャン」


「じゃあ、早く、そこ行く」

「ニャン」


 猫は一向に動こうとしない。


「なぜ、行かない?」

「ニャン」


「帰っちゃう」

「ニャンニャン」


「近く、いる?」

「ニャン」


「誰?」辺りを見回すと、家族連れや恋人たちがちらほら見える。


「あの中、誰か?」指をさすと「ニャンニャン」

「違う? でも、この中、いる」

「ニャン」


「ロイ、マーティ。わから、ない」


「捜してる人がこの中にいて、しかも近くにいるんだろう? しかし、周りにいる人達じゃないとなれば、僕たちしかいないだろう」


「ニャン!」

「エエッ!」一同ビックリして猫を見る。


「なぜ俺たちを捜してたんだ?」マーティが(うたが)いながらも聞くと「ニャン、ニャニャニャ……」

「ストップ!」

「ニャ?」


「お前は人間の言葉を理解することができるようだが、俺たちは猫の言葉を理解することができない」


「ニャアア」


「こうなると、どうして僕たちを捜してたのか、その理由が知りたいな」


『ねえ、猫の言葉を翻訳(ほんやく)できる機械ってないの?』とシュールが聞くので「鳴き声を判別するものはあるけど、まだ会話できるようなものは開発されてないよ」


『そうなんだ』


「どうしたもんか」考え込むと『言葉がわかるんだったら、文字が書けるんじゃない?』シュールがさらに案をだすと「ニャン!」と鳴き、右前脚を上げて爪を出すので「その爪、ペン、持てない」アニスが苦笑すると「ちょっと待った!」ロイが止めに入る。


「もしかして、シュールの声が聞こえるのか?」猫を見ると「ニャン!」と鳴くので『どうして!』驚くシュールの声に「ニャアアア」首を(かたむ)ける。


「君は精霊なのか?」


「ニャ?」さらに首を(かたむ)けるので「違うらしいな。でも、シュールの声が聞こえるんだろう?」


「ニャン」


「どうする?」お手上げのロイがマーティに聞くと「いったん艦に戻って、会話できる方法を考えるか」



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