3 言葉を理解する猫
「餌をもらってないのか?」少し心配になるマーティ。
『迷子になって、家に帰れないのかもしれないよ』シュールも少し心配。
「あとで交番に連れていくか。もしかしたら届けが出ているかもしれない」
「もしそうなら、飼い主は心配してるだろうな」
「ニャ、ニャ、ニャ」
「なんだ? 何か言ってるように見えるけど」ロイが猫を見ると「ニャン、ニャン」と鳴く。
「たまに、人間の言葉を理解してるのか? と思うようなことがあったが、話の内容を理解することはさすがにないだろう」と言うマーティに向かって「ニャーン」と鳴くので「……どう思う?」ロイに振ると「……理解する時間をくれ」
「逃げるな」
「ニャ、ニャ、ニャン」
「猫ちゃん、言葉、わかる?」アニスが話し掛けると「ニャン!」と一鳴きする。
「お家、遠い?」
「ニャン」
「近い?」
「ニャンニャ」
「どっち?」ロイを見と「君の判断に任せるよ」苦笑する。
「シュール、どっち、思う?」
『私は遠いと言ってると思う』
「私も、同じ。猫ちゃん、なぜ、ここいる?」
「ニャ、ニャンニャンニャ。ニャンニャニャ。ニャニャン。ニャニャン」
「……シュール、わかる?」
『全然わかんない』
「ニャー」
アニスも猫も困ったような顔をして黙り込むので「人間の言葉がわかるというなら、イエス・ノーで答えられる質問をすればいいんじゃないか?」マーティが呆れて案をだすと「そうする」アニスは気を取りなおし、イエスのときは一回、ノーのときは二回鳴くというルールを決め、再度、猫に質問することにした。
「猫ちゃん、お家、遠い?」
「ニャ」
「ご主人、一緒?」
「ニャンニャン」
「迷子、なった?」
「ニャンニャン」
「お家、帰れる?」
「……ニャン。ニャー、ニャンニャン」
「帰れない?」
「ニャン」
「迷子、違う。でも、帰れない」
「ニャン」
ロイとマーティは、アニスの質問に答える猫が気持ち悪く思うが、興味も湧いてきた。
「あの猫、アニスの質問に答えてるぞ」
「本当は猫じゃないんじゃないか?」
「猫じゃなかったら何なんだよ」
「わかるわけないだろう」
二人がボソボソ話している間にも、アニスは猫に質問していた。
「目的、あるから、ここ、来た?」
「ニャン」
「誰か、捜してる?」
「ニャン」
「ご主人?」
「ニャンニャン」
「お友達、猫ちゃん?」
「ニャンニャン」
「捜してる、相手、ここ、いる?」
「ニャン」
「じゃあ、早く、そこ行く」
「ニャン」
猫は一向に動こうとしない。
「なぜ、行かない?」
「ニャン」
「帰っちゃう」
「ニャンニャン」
「近く、いる?」
「ニャン」
「誰?」辺りを見回すと、家族連れや恋人たちがちらほら見える。
「あの中、誰か?」指をさすと「ニャンニャン」
「違う? でも、この中、いる」
「ニャン」
「ロイ、マーティ。わから、ない」
「捜してる人がこの中にいて、しかも近くにいるんだろう? しかし、周りにいる人達じゃないとなれば、僕たちしかいないだろう」
「ニャン!」
「エエッ!」一同ビックリして猫を見る。
「なぜ俺たちを捜してたんだ?」マーティが疑いながらも聞くと「ニャン、ニャニャニャ……」
「ストップ!」
「ニャ?」
「お前は人間の言葉を理解することができるようだが、俺たちは猫の言葉を理解することができない」
「ニャアア」
「こうなると、どうして僕たちを捜してたのか、その理由が知りたいな」
『ねえ、猫の言葉を翻訳できる機械ってないの?』とシュールが聞くので「鳴き声を判別するものはあるけど、まだ会話できるようなものは開発されてないよ」
『そうなんだ』
「どうしたもんか」考え込むと『言葉がわかるんだったら、文字が書けるんじゃない?』シュールがさらに案をだすと「ニャン!」と鳴き、右前脚を上げて爪を出すので「その爪、ペン、持てない」アニスが苦笑すると「ちょっと待った!」ロイが止めに入る。
「もしかして、シュールの声が聞こえるのか?」猫を見ると「ニャン!」と鳴くので『どうして!』驚くシュールの声に「ニャアアア」首を傾ける。
「君は精霊なのか?」
「ニャ?」さらに首を傾けるので「違うらしいな。でも、シュールの声が聞こえるんだろう?」
「ニャン」
「どうする?」お手上げのロイがマーティに聞くと「いったん艦に戻って、会話できる方法を考えるか」




