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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 地下からの生還
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2 ダイクロイックアイ

 

 次の日も四人は街へ出ていった。

 相変わらずアニスの「あれ何?」が続く。


 特に公園が気に入ったらしく、芝生の上に座り、草の感触を楽しんでいる。

 その彼女のそばへ、一匹の猫が近寄ってきた。


「猫ちゃん、お散歩?」

「首輪が付いてる。飼い主と一緒に来たんだろう」首輪についている鈴を触るマーティ。


「ヘェ、この猫オッドアイだよ。それもダイクロイックアイだ」猫の目を見ているロイに『ダイクロイックって何?』シュールが舌を()みそうになりながら繰り返すと「瞳の色が左右で違うのをオッドアイと言って、その中でも、一つの眼球で色が二色なのをダイクロイックアイと言うんだ。これは虹彩(こうさい)という瞳の部分の遺伝子異常らしいけど、すごく珍しいんだよ」


「本当、黄色と、青、二色」猫の右目をのぞき込むアニス。

「きれいな毛並みをしてるな。きっと血統書付きだろう」


 薄いグレーのしなやかな身体をアニスに()り寄せている。


「猫ちゃん、名前は?」猫の頭を()でていると、ピピッ、ピピッと音が鳴った。「もうお昼か」ロイの腕時計が正午を知らせる。


「何か食べに行くか」マーティが立ち上がると「じゃあね、猫ちゃん。お帰り」声を掛けてアニスも立ち上がる。


「なに食べる?」ロイがマーティに聞くと「公園の入り口横にホットドック屋があった」指をさすので「いいね。それにするか」



 公園の入り口近くまで戻ると『ロイ。あの猫が付いてきてるよ』とシュールに言われて振り返ると「ニャア」と鳴く。


「ご主人のところに帰らないと心配するよ」


「この近くに住んでて、いつもここへ来てるんじゃないか?」注文を済ませたマーティが戻ってくると「一緒、食べる?」アニスが嬉しそうに猫に話しかける。



 三人はホットドックを受け取ると、また芝生のところへ戻った。


「アニス、あげたい気持ちはわかるが、人間の食べ物は味が濃すぎて猫に向かないんだ」パンをあげようとするのをマーティが止める。


「よく知ってるな」

「以前、付き合ってた子が大の猫好きで、その時に覚えた」

「ヘェ、そうなんだ」


「でも、猫ちゃん、お腹、空いてる」アニスの腕に前足を乗せ、ホットドックを食べようと首を伸ばしている。


「ソーセージは味付けした肉だからダメだ。()でただけの鶏肉や白身魚ならいいんだが」


「向こうに串焼きの店があるぞ。あそこなら生肉があるんじゃないか? ()でてくれるか聞いてみよう」ロイは立ち上がるとホットドック屋の奥にある屋台へいき、しばらくすると、紙皿に茹で肉を乗せて戻ってきた。


「事情を話したら、モモ肉を茹でてくれたよ」


 紙皿を猫の前に置くと、(にお)いを()いで勢いよく食べはじめる。


「それとオマケ」別の紙皿を芝生の上に置く。

「フレンチドックか。子供の頃よく食べた」


「これ、何?」


「アニスは知らないのか。食べてみればわかるよ。こうやって食べるんだ」ロイのまねをしてかぶりつくと「ホット、ケーキ? あっ、ソーセージ」


「うまいだろう? 鶏肉をくれたからそのお礼で買ったんだ」

「初めて。おいしい」


「なんだ、もう食べ終わったのか?」猫が見上げているのに気付き、紙皿を見ると、山盛りだった鶏肉を完食していた。


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