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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 「第二の門 / 氷の炎の門」
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35-3 おやつ抜き期間だけど

 

「ところでエル、何かあったのか?」ロイが話題を変えると「ああ、さっきの打ち合わせのときにでた装飾品のパーツの検品をする件なんだけど」


「何か問題でも起きたのか?」


「強力な追っかけについて何も話さなかったろう? 注文したパーツの箱にまた爆弾が仕掛けられる可能性があるからさ。クラリー夫人たちにもしものことがあったら大変だから、その点をどうするが聞きにきたんだ」


「それがあったな。まあ、危害を加えるようなことはしないと思うけど、さらわれる危険性があるから、外部の人と会うときは、念のため護衛を付けたほうがいいな」マーティに聞くと「そうだな」(うなず)くので「今、イノンドに護衛を付けてくれるか依頼してるんだ。もし変装して現れたら捕まえられるチャンスだからね。きっと了解してくれるんじゃないかな」


「そこまで手配してるなんて、さすがエルだ」

「そう。機転が利くんだよな」


(おだ)てても、おやつ抜きは解除しないよ」

「ダメ?」


「仕方ない。おやつ抜き期間分、食べるか」

「……マーティ」


「僕もそうしよう」

「……そう言うと思ったよ」


「二人、甘党、知らな、かった」ロイたちとエルの対照的な顔を見て目を丸くすると「だから、この二人にはおやつ抜きが一番効くんだよ」


「知られたら一番困る奴にバレるなんて、ついてないな」

「誰でもわかるよ。昼食後、二人してカフェに出てるティータイム用のお菓子を物色してるだろう?」


「そうか。あれがマズかったのか」

「いまさら気付いても遅いよ、マーティ」


 真剣に悩む二人を見てクスッと笑うアニスに「笑いごとじゃないよ。僕たちにとっては大問題なんだからね」とても深刻なことなんだ、と言わんばかりの口調に「ごめん、なさい」と言いつつ笑ってしまう。


「彼女に文句言うのは筋違(すじちが)いだろう? ケーキおいしかった。また焼いたらご馳走(ちそう)してほしいな」


「エルにもあげるの?」

「おやつ抜き期間を延長してほしい?」


「俺は言ってないから除外(じょがい)しろ!」間髪(かんぱつ)入れずにマーティが(うった)えるので「僕を見捨てる気か!」と言うロイに「何言ってんだ! これ以上おやつ抜き期間を食らうのはごめんだ!」


「嫌ならいいよ」

「そんなことない! 今のはいつもの冗談。本気で言ってないよ!」


「何度も言うけど、口は(わざわい)の元だからね」

「以後、十分に注意させていただきます」

「ま、いいでしょう」言い残すとリビングから出ていく。



『アハハハハッ! 怒られてんの!』大笑いのシュール。慌てた二人の顔がよほどおかしかったらしい。


「まさか、シュールがエルを呼んだのか?」

『そんな事できるわけないじゃん。エルには私の声が聞こえないんだよ』

「そうだけど、タイミングがピッタリ合ったじゃないか」


「さっきは本当に(あせ)った」動悸(どうき)が治まらないマーティが「アニス、いい加減に笑うのをやめてくれないか?」眉間(みけん)にしわを寄せると「ご、ごめん、なさい。切羽(せっぱ)、詰まった、顔、初めて、見た。いたずら、見付かった、子供、みたい。彼に、勝てない」


「エルに勝てる奴がいると思うか?」マーティに聞くと「もしいたら、俺はそいつを(あが)(たてまつ)るぞ」


 そう聞いて、なお笑うアニス。


『でも、こうやって笑うことができるようになったのはいい事だよね。これからどんどんやってもらおうよ』


「冗談じゃない! その度におやつ抜きにされたらたまったもんじゃない!」

「やめろ! 金輪際(こんりんざい)、その言葉は聞きたくない!」


『でも、エルに最大の弱みを握られちゃったから、二人にその気がなくても、起こる可能性があるよ』と言われ、言葉が出ない。


『これから大変だね』

「他人事だと思ってるだろう」

「こっちの身になってみろ」


 文句を言いつつ、二人で残りのチョコレートケーキを平らげていく。



 それから三日後、電気室の修理のために星へ降りると、思っていたよりドックの設備が整っていたため、当初の予定より二日早く修理が終わり、離陸すると、アイスゾーンを抜けてバーニングゾーンへ向かった。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

今回で第四章が終了しました。

次話より第五章に入りますので、引き続きお楽しみください。

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